カンヌ脚本賞「怪物」 坂元裕二氏「今でも夢を見続けているよう」30年前の願いかなえ喜び語る

[ 2023年5月30日 05:30 ]

会見に臨む映画「怪物」で脚本を担当した坂元裕二氏(右)。左は是枝裕和監督(撮影・郡司 修)
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 第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「怪物」(6月2日公開)の坂元裕二氏(56)が29日、帰国した是枝裕和監督(60)とともに都内で凱旋会見した。是枝監督からトロフィーを受け取り「今でも夢を見続けているよう。大きな事態になってしまい責任が手に背中に乗ってきている感じ」と謙虚に喜びを語った。

 「加害者をどう描けば被害者の存在に気付けるかという自分が考えてきたテーマを、小学校から中学校に出会った友人との出来事を基に書いた」という脚本。学校でのささいなけんかが大きな事件に発展していく様子を子供たち、親、教師の3つの視点から描いた。映画脚本を1人で手掛けるのは2作目。「監督やプロデューサーから多くの知己を得て書き上げた」と感謝した。カンヌには30年ほど前、知り合いの映画関係者の配慮で訪れており「いつか自分の作品が上映されたら、どんなに幸せだろうと思っていた」との願いをかなえた。だが「その翌日におなかを壊してしまい、ずっと寝込んでいました。その時、配給の方が持ってきてくれたウエハースがとてもおいしかった。それがカンヌの思い出」と自嘲気味に語った。

 受賞後は多くの祝福が届き、「周りの方からおめでとうと言われるとうれしくなります」とようやく笑顔。同作が日本映画として初受賞した独立賞で、LGBTQ(性的少数者)を扱った作品に贈られる「クィア・パルム賞」の審査委員長ジョン・キャメロン・ミッチェル監督から「人の命を救う映画だ」というメッセージには「涙が出ました」としみじみ語った。

 是枝監督は「チャレンジのしがいのある脚本。素晴らしい評価を頂いた」と称賛。そして「チャンスがあればお願いしたい」と再タッグを熱望した。

 坂元氏は、既に24年公開予定の映画「片思い世界」の脚本も手掛けているが、「けっこうなベテランでカスカスなんですよね。絞っても何も出ない状態」と苦笑い。それでも、「是枝監督は脚本家としても尊敬している。1回は偶然で、簡単だとは思っていないが2回目という必然があったら幸せですね」と前向きだった。

 ≪「自分には無理…」是枝氏の手腕称賛≫テレビドラマを主戦場としてきたが、映画に対する思いも強かった坂元氏。1996年には「ユーリ」で映画監督デビュー。「その時に全く監督という仕事に向いていないということが分かり、それ以来(監督は)やるものかと思い30年近くたちました」と回顧。時の経過とともに「今なら(監督を)できるんじゃないか」と思っていたというが「今回、是枝さんの仕事を見てこれは自分にはできない、無理だなとはっきり分かりました」とその手腕を称賛した。

 そんな是枝監督の手により自らの脚本が映像になったことについては「監督や皆さんに多くの指揮を頂いて書き上がったものが、編集の段階でもどんどん良くなっていき、映画が成長していった」と振り返った。

 ▽怪物 大きな湖のある郊外の町を舞台に、息子を愛するシングルマザー、学校教師、秘密を抱えた子供たちのそれぞれの視点で、ある事件とその結末を描いた作品。主演は安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太の4人。是枝監督にとって「万引き家族」以来、5年ぶりの日本映画。脚本家の坂元裕二氏とは今作で初タッグ。3月に亡くなった坂本龍一さん(享年71)が音楽を担当した。

 ≪出世作「東京ラブストーリー」≫◇坂元 裕二(さかもと・ゆうじ)1967年(昭42)5月12日生まれ、大阪府出身の56歳。86年、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しデビュー。91年、フジテレビ「東京ラブストーリー」が大ヒット。そのほか同局の11年「それでも、生きてゆく」、13年「最高の離婚」などを手掛ける。映画は21年「花束みたいな恋をした」で興収38億円を記録した。

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