NHK版金田一耕助 ついに「犬神家の一族」映像化のワケ 鎌倉殿チーフ・吉田照幸監督が語る狙いと挑戦

[ 2023年4月22日 09:00 ]

「犬神家の一族」前編。湖畔の屋敷を舞台に、犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛の莫大な遺産をめぐる謎の連続殺人事件に挑む金田一耕助(吉岡秀隆)(C)NHK
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 俳優の吉岡秀隆(52)が主演を務めるNHK版金田一耕助シリーズの最新第4弾「犬神家の一族」は22、29の両日(後9・00~10・30、BSプレミアム・BS4K同時)に放送される。過去、幾度となく映像化された推理作家・横溝正史の傑作ミステリーを前後編各90分のボリュームでドラマ化。昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のチーフ演出を務め、今作が最新作となる吉田照幸監督(53)に企画意図を聞いた。

 「獄門島」(2016年)「悪魔が来りて笛を吹く」(18年)「八つ墓村」(19年)に続き、4年ぶりとなる待望作。吉岡は前々作・前作に続き、3回目の名探偵役。湖畔の屋敷を舞台に、犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛の莫大な遺産をめぐる謎の連続殺人事件に挑む。

 今回の脚本はNHK「岸辺露伴は動かない」シリーズ、アニメ「進撃の巨人」「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ、特撮ドラマ「スーパー戦隊」「仮面ライダー」シリーズなどで知られる小林靖子氏が担当。犬神家の長女・松子役に大竹しのぶ、次女・竹子役に南果歩、三女・梅子役に堀内敬子、松子の一人息子・佐清役に金子大地、佐清を慕う野々宮珠世役に古川琴音らと豪華キャストが集結した。

 市川崑監督&石坂浩二主演で1976年に映画化され「スケキヨのマスク」「湖面から突き出る逆さ足」などでおなじみのビッグタイトル「犬神家の一族」を選んだ理由を尋ねると、吉田監督は第1弾「獄門島」から順を追って経緯を振り返る。

 「獄門島」は「東西ミステリーベスト100」国内編(週刊文春選)の85年版・2012年版1位に輝くなど、推理小説の金字塔。まずは「獄門島」に“新解釈”でチャレンジした。

 外連味あふれる市川監督&石坂主演の映画(77年公開)が「皆さんのイメージに残っていると思うんですが、原作の印象は違って、金田一の復員直後が舞台でダークな内容。僕はより原作に忠実に、クールな感じで映像化してみたいと思ったんです」。映画テイストあふれる映像も相まって現役の推理小説家や原作ファンから好評を博し、第2弾「悪魔が来りて笛を吹く」、第3弾「八つ墓村」とシリーズ化された。

 「『悪魔…』と『八つ墓村』もビッグタイトルといえばビッグタイトルなんですが、『獄門島』と何が違うかと言うと、皆さん、あまり映画のことは覚えていないんじゃないでしょうか。『悪魔…』も『八つ墓村』も、映画は市川監督と石坂さんのコンビじゃないんです(※1)。その点、『犬神家の一族』は原作よりも、やっぱり映画が皆さんの記憶に強烈に焼き付いていますよね。これまで二の足を踏んできた部分もありましたが、後に取っておいて、できないと後悔すると思って挑戦を決めました。企画自体は『鎌倉殿』の前に出していたんですけど、『鎌倉殿』をやり切った勢いも撮影を後押ししてくれたと思います」

 NHK版金田一シリーズの肝は、原作の“新解釈”にある。

 「やっぱり演出というのは、表現が仕事なわけです。『鎌倉殿』で言えば、三谷幸喜さんの脚本をどう表現するか。この金田一シリーズで言えば、原作をどう表現するか。先ほども申し上げた通り、『犬神家の一族』の映像化が難しいのは映画の存在が大きすぎるからで、僕もそうですけど、子供心に『見ちゃいけないものを見た』と怖くなったり、有名なオープニングクレジットの明朝体にカッコいいと感じたことが今も残っていますよね。その価値は揺るぎないものですが、今あらためて見ると、ある意味、過剰だったり、漫画っぽく感じる部分もあって、それはそういう作風を当時の人々に求められていたからだと思います。であれば、現代に刺さる表現で『犬神家の一族』を映像化してみたいというのは、演出家としては至極当然なモチベーションで。つまり、この金田一シリーズが目指しているのは、原作通りの映像化でもなく、映画のリメークでもなく、原作を土台、基盤に今らしい新解釈、アレンジを加えて表現しようということなんです」

 その一端は、シリーズを貫く“乾いたトーン”。「もしくは冷徹、殺伐とでもいいますか。映像的にもストーリー的にも、映画『ダークナイト』や『ジョーカー』のような雰囲気を狙っています」。新しい「犬神家の一族」がついにベールを脱ぐ。

 (※1)79年公開の映画「悪魔が来りて笛を吹く」は監督・斎藤光正、金田一役・西田敏行。77年公開の映画「八つ墓村」は監督・野村芳太郎、金田一役・渥美清。96年公開の映画「八つ墓村」は市川崑監督がメガホンを執り、豊川悦司が金田一役を演じた。

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