藤井王将の最年少6冠に待った 渡辺棋王、天敵への連敗7で止めた “99対1”応酬の末…激闘174手

[ 2023年3月6日 04:57 ]

藤井王将(左)に勝利し、感想戦で対局を振り返る渡辺棋王(代表撮影)
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 将棋の第48期棋王戦5番勝負は5日、新潟市の新潟グランドホテルで第3局を行い、後手の渡辺明棋王(38)=名人との2冠=が挑戦者・藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=を174手で下し、シリーズ成績を1勝2敗とした。第4局は19日に栃木県日光市で予定されている。

 息も絶え絶えに逃げ切った。藤井戦の連敗を7で止めた渡辺は主催者インタビューの始まる前から「なんか攻めあぐねて…あれ、詰みだったのかなあ」と、まるで敗者のような弁を連ねた。それほど苦しい戦いだった。

 角換わり腰掛け銀に導入された今局は中盤の出口付近まで力と力が対峙(たいじ)したままの均衡状態をキープ。だが自陣に向かって右辺に逃げた藤井王の進行を巧妙にとがめ、パズルのようなからめ手でじわじわと追い詰めていく。着実にリードを広げて寄せに入った終盤に、珍しく手段を誤った。

 「いろいろあったんですが、最後は(逆転の)筋に突っ込んでしまった感じで…」

 終盤に絶対的自信を持つ藤井から猛攻を浴び、最後は自王に短手数の詰みが生じた。シリーズ0勝2敗でカド番に追い込まれているため、10年間保持し続けていた棋王位を失う悪夢が刻々と近づいている。観念してもおかしくないその瞬間、今度は藤井が手を間違えた。時間切迫の中、ABEMA将棋チャンネルのAI評価値が99対1と1対99を行ったり来たりする大シーソーゲームは最後の最後、渡辺に勝利の女神がほほ笑んだ。

 劇的勝利にもかかわらず、渡辺の口からは反省のコメントが止まらない。「ちょっと良くなった後の寄せでどんどん差が詰められた」「だいぶ追い込まれて、負けになったかと」「良くなったあとの指し方がアレだった」。それでも藤井の得意とする先手番をブレークしての勝利は価値がある。「中盤でバランスが取れてたのは良かったですね」と、ようやくポジティブワードを口にした。

 この日の勝利で対戦成績は渡辺の3勝15敗。名人の肩書を持つ第一人者としては屈辱的な差が、激闘の末わずかに縮まった。次局の第4局は先手番。シリーズ成績をタイに持ち込む絶好の機会だ。「一つ返すことができたので、また次からも目の前の一局、ということでやっていきたいですね」

 12日には都内で行われるランニングイベントに参加して気分転換を図る。渡辺の逆襲が始まった。

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