田中道子 一級建築士試験合格の裏側 「私は恋愛以外、凄くのめり込むタイプ」

[ 2023年1月11日 08:30 ]

 【牧 元一の孤人焦点】一級建築士試験に合格した俳優の田中道子(33)が「私は恋愛以外、凄くのめり込むタイプ」と合格への道のりを明かした。

 田中は元々、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズの愛好家、競馬ファンとして知られる。

 「私はパラメーターが偏っています。モデルをやっていたのに美容やファッションの研究は進みませんでした。恋愛もドライです。でも、好きなものについては突き詰めたくなるんです。家にいるのが好きなので、一級建築士の勉強をする環境をつくることが苦ではありませんでした」

 そもそも、建築を勉強するきっかけがファイナルファンタジー(FF)だった。

 「子供の時、衝撃を受けました。『FF8』に『エスタ』という街が出てくるんですけど、そこはビルとビルの間の空中を車が走っているような、近未来的な街でした。ゲームの中ではどんなファンタジーな建物でも作ることができる。『FF』のマップを作る人になりたいと思いました。ゲームクリエーターになりたくて、静岡文化芸術大学デザイン学部空間造形学科に行きました。そこはデジタルの空間デザインではなく、建築系だったんですけど、学んでみると楽しくて、いずれ建築家になりたいと思いました」

 大学卒業後に二級建築士試験に合格。「ミス・ワールド2013日本代表」を務めたことなどから芸能界に誘われ、俳優の道を歩んだが、近年のコロナ禍で再び建築を学ぶきっかけを得た。

 「緊急事態宣言で仕事がストップした時期がありました。2カ月間ずっと家で待機していて、人生で初めてネガティブな気分になったんですけど、その時、自分の夢は建築士になることだったと思い出したんです。コロナ禍で副業のことが話題になっている時期でもあったので、自分も二刀流ができるならばやってみたいと考えました。実務経験がなくても一級建築士試験を受験できるようになっていたのも追い風になりました」

 一昨年7月から週に1回、資格試験予備校に通学。昨年7月の学科試験、10月の設計製図の試験に合格し、初挑戦でありながら夢をかなえた。

 「計約1年3カ月くらい勉強しました。合格する勉強時間の目安が1000時間だと言われたので、1000時間確保すればチャンスがあり、1日平均3時間確保すれば1年と少しで到達できると考えました。1日ゼロ時間の時もあったし、1日12時間の時もありました。たぶん、1年3カ月で1200時間くらい勉強したと思います。その間、2回くらいしかお酒も飲まず、ひたすら家で勉強する毎日でした。勉強に関しては、高校受験の時、最初は英語のテストで8点とか取っていたのに、めちゃくちゃ勉強したら希望通りの学校に行くことができました。そういう成功体験があったので、一級建築士の難しい問題を辞書を読みながら解いていく作業が苦ではありませんでした」

 このまま建築家になるわけではなく、俳優業を続けていく。

 「お芝居は建築と同じように正解が一つではありません。これまでは監督さんと話し合いながら進めることが多かったんですけど、もっと土台をしっかりさせて自分で設計して味の濃い女優になりたい。これから女優を目指す人たちに、私のように自分の夢をあきらめずに女優を続けるタイプの人もいるんだと思ってもらえたらうれしいです。建築の方では、学校や子供たちに関わる施設を設計したいという夢があります」

 気になるのは本人の人生設計だ。

 「私には好きな人に頼りたい願望があります。初めてできた彼氏は、ネットのゲームで初心者の私がモンスターにやられている時に防具をくれた人だったんです。理想は『FF10』のジェクトです。何も言わずに命を張って全てを守る姿が格好いい。私は普段しっかりしていると言われることが多くて、どちらかと言うと、私に頼りたい人が寄ってくるんですけど、私の方が頼りたいので、そこに食い違いが生じます。施主の要望と私の設計が合わないんです。自分自身の設計図は、私は先のことを決めたくない派なので、今の小さな平屋からどんどん増築してリノベーションして良い意味で先の分からないものにしたいです」

 俳優業を続けながらの一級建築士試験合格は一種のサプライズだったが、これからまだまだ驚かせてくれそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2023年1月11日のニュース