坂本龍一「ここに来て新境地かなという気持ち」 がんと闘いながら世界に届けた2年ぶりのピアノコンサート

[ 2022年12月12日 05:10 ]

配信でピアノ・ソロ・コンサートを行った坂本龍一(「Ryuichi Sakamoto:Playing the Piano 2022」(C)2022 KAB Inc.)
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 がん治療を公表し、今年6月にがんの進行度が最も重い「ステージ4」にあると明かした世界的音楽家の坂本龍一(70)が11日、2年ぶりのピアノコンサートを全世界に向けて配信した。

 体調面から「これが最後になるかもしれない」と予告していたステージ。闘病の影響か首は細く、頬がこけるなど痩せた印象だが、まなざしは力強く、繊細な音色は健在だった。終了後には「今回初めてピアノソロで弾く曲も随分ありました。自分としてはここに来て新境地かなという気持ちもあります」と充実の表情を見せた。

 映像は全てモノクロで、ただひたすら、坂本の情感豊かな演奏に耳を傾ける時間となった。自ら手掛けた映画「戦場のメリークリスマス」(83年)や、米アカデミー賞で日本人初の作曲賞を受賞した映画「ラストエンペラー」(87年)のテーマ曲など、全13曲を披露。コンサートの模様は日本だけでなく欧米、アジアなど約30の国や地域に向け、12日まで計4回配信する。初回は同時視聴者数3万人を記録した。

 体力面を考慮し、今年9月中旬に事前収録した。場所は東京・NHK放送センターの509スタジオで「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」の黄金期にあたる80年代に何度も演奏や公開収録を行った思い出の場所だ。撮影は米ニューヨークから招集した映画製作チームが担当。1日に数曲ずつ演奏し、収録に数日かけて完成した。動画内で坂本は「アレンジも選曲も時間をかけて慎重にやった」と振り返った。こだわりが詰まったステージだった。

 14年に中咽頭がん、昨年1月に直腸がんの治療を公表。同年10、12月に両肺に転移したがんの摘出手術を行った。周囲によると、現在は音楽制作や月刊文芸誌「新潮」での自伝連載に全力を傾けている。自身71歳の誕生日にあたる来年1月17日には、約6年ぶりのオリジナルアルバム「12」を発売。闘病期間中に「音の日記としてスケッチした」という計12曲を収録し、新たな音楽を世に送り出す。

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