蒔田彩珠 朝ドラ「おかえりモネ」でヒロインの妹役 「違う自分になれて楽しい」

[ 2021年6月29日 10:30 ]

NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で、未知を演じる蒔田彩珠(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で、ヒロイン・百音(清原果耶)の妹・未知を演じる女優・蒔田彩珠(18)に話を聞いた。

 新型コロナ対策用のアクリル板越しに相対して驚いたのは役柄と本人の印象の違い。映像の中の未知は硬く暗い感じだが、実際の蒔田は柔らかく明るい感じ。いかに役作りに徹しているかがよく分かる。

 「カメラの前に立つと、自然と未知が持つ暗さが出ているようで、演出の方から『もっと明るくして!』と言われます(笑)。周りの役者さんたちが凄い方たちばかりで、引き込まれるお芝居をされるので、迫力がありますね。その場にいると、自然に私自身は現場からいなくなっているので、未知でいられるのだと思います」

 さらに驚いたのは、臨機応変に芝居を変化させていること。ベテランの演技派なら当たり前かもしれないが、彼女はまだ18歳だ。例えば、6月9日の放送。未知はカキの研究をめぐって祖父(藤竜也)と衝突し、父(内野聖陽)、母(鈴木京香)も交えて険悪な雰囲気になる。あの場面で未知は祖父、父を激しく責め立てたが、実は当初の演技は控えめだったという。

 「内野さんのアドバイスがあって、あのシーンが出来上がりました。私は台本を読んだ時、怒りがふつふつとわいてくる感じをイメージしていたんですけど、現場で内野さんが『もっと怒りを表に出した方がいい』と言ってくださったんです。その方が迫力があったし、あの場面の後で未知が『ごめんなさい』と謝った時、『本当にいけないことをしてしまった…』という未知の思いが、見て頂いた方々によく伝わったんじゃないかと思います」

 7歳の時に子役としてデビュー。是枝裕和監督の映画「海よりもまだ深く」「三度目の殺人」「万引き家族」に出演したほか、昨年公開の映画「朝が来る」(河瀬直美監督)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、キャリアを重ねて来た。

 「自分が台本を読んだ時の印象と、実際に撮影現場で求められるものが違うことは多いです。だから、あまり作り込み過ぎずに、流れを覚えるだけくらいの気持ちで現場に行くようにしています。ガチガチに固めて行ってしまうと『違う』と言われた時にショックだし、短い時間で変えるのが難しくなります。是枝監督のドラマ『ゴーイングマイホーム』に出演した時は、事前に台本をいただいていなかったんです。それがスタートなので、事前に作り込み過ぎないというのが当たり前になっています」

 是枝監督の現場で培った経験が朝ドラでも生かされているようだ。

 「このお仕事は、カメラの前に立った時、全く違う自分になれることがいちばん楽しいです。大事なのは、自分1人でやっているのではないというのを理解することだと思います。共演者、監督、脚本家やスタッフのみなさん…。みなさんがいてこそのお芝居です」

 20歳前の女優とは思えないほど大人の答えだが、時に、少女の素顔がのぞく時もある。未知が祖父、父を激しく批判したあの場面を、完成した映像で見た時に本人どう感じたのか?

 「恥ずかしかったです」

 その照れ笑いのみずみずしさは紛れもなく18歳の女の子。ドラマの中の未知とは異なる、華やかな色彩を感じる。

 「好きでやっているお仕事なので、『頑張る』ということではなく、『楽しむ』ということを大切にできる女優になりたいです」

 若手屈指の実力派の今後が楽しみだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2021年6月29日のニュース