藤井聡太王位 豊島竜王との王位戦開幕 タイトル戦3連勝の相掛かり 対局前は先に着座し挑戦者魂

[ 2021年6月29日 19:43 ]

「お~いお茶杯第62期王位戦」7番勝負第1局で昼食休憩後、対局再開し真剣な表情を見せる藤井聡太王位=名古屋市中区の名古屋能楽堂(代表撮影)
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 藤井聡太王位(18)=棋聖と2冠=が豊島将之竜王(31)=叡王と2冠=を挑戦者に迎える第62期王位戦7番勝負第1局が29日午前9時、名古屋市の名古屋能楽堂で1日目が始まった。振り駒の結果、先手が藤井に決まり戦型選択の分岐点だった5手目、藤井が角頭を守るため左金が上がり、相掛かりへ進んだ。

 藤井の相掛かりは昨年8月、当時の木村一基王位からストレート奪取した王位戦第4局以降、タイトル戦で4局連続。今年に入って棋聖戦第1局、第2局でも渡辺明王将=名人、棋王の3冠=を下し、3連勝している。

 前日の対局場検分後の記者会見。「豊島竜王との対局は貴重。その機会を生かしたい気持ちは強い」。対戦成績1勝6敗。小学6年時に藤井の師匠・杉本昌隆八段の研究室で練習将棋を指して以来、常に仰ぎ見てきた存在に研究成果をぶつけた。

 封じ手まで2時間を切り、お互いの主張が激突する場面があった。藤井が1筋の歩を5段目へ進めると、豊島はそれを受けずに反対の9筋の歩を伸ばしてぶつけた。

 5筋にいる豊島王に対して藤井王は6筋。端歩の取り合いは戦場に近い藤井王に不利と見られたが、構わず藤井は1筋の歩をさらに進め、豊島も9筋を取り込んで48手目を豊島が封じた。「藤井王位は持ち時間の長い将棋では優位になるとそのまま勝ち切る将棋が多い。自分もそういう展開を理想としている」。豊島は前日会見で語った先行逃げ切りを目指した。

 対局開始前にも、藤井の挑戦者魂を見るシーンがあった。タイトル戦では通常、挑戦者、王者の順に対局場に入る。この日、先に着席したのは藤井。開始15分前に上座を占めた。決して遅くはない12分前、対局場へ入った豊島は着席して待つ藤井を視界に捉えた瞬間、表情に緊張を走らせたように映った。

 昼食は藤井が海老天ころうどんと稲荷寿司、豊島は親子丼ところ蕎麦。藤井が瀬戸市で豊島は一宮市出身の同郷対決。麺に冷たいつゆをかけて食べる東海名物を共に選択し、2日制の長丁場に備えた。

 《地元で記念の「封じ手」初公開》藤井が昨年、2冠目となる王位を獲得した第4局の封じ手が30日、1日限定で故郷・愛知県瀬戸市の市文化センターで初公開される。封じ手は九州豪雨のチャリティーを目的にネットオークションにかけられ、1500万円で落札。所有者からの申し出で実現した。3年前、発足した瀬戸将棋文化振興協会支部は現在474名の会員数を誇り、全国最多。藤井人気の高さを裏付けている。

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