羽生善治九段 史上最多の1434勝 大山15世名人より21歳若い48歳で記録更新

[ 2019年6月5日 05:30 ]

大勢の報道陣が詰めかける中、1434勝を達成した羽生九段(撮影・吉田 剛)
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 将棋の羽生善治九段(48)は4日、東京都渋谷区の将棋会館で指された王位戦挑戦者決定リーグ・プレーオフ(白組)で永瀬拓矢叡王(26)を下し、通算1434勝目を記録。大山康晴15世名人(故人)の歴代記録を上回る単独最多勝に到達した。86年のプロデビュー以来、33年4カ月4日での記録更新。棋界の第一人者に新たな勲章が加わった。

 ダメ押しに近い歩を羽生が敵陣に打ち込み、永瀬が氷のように固まった。「夢中で指していたので(最多勝の意識は)ありませんでした」。叡王が静かに頭を下げた午後7時43分、前人未到の記録が打ち立てられた。

 「今年に入ってから記録に少しずつ近づいていくのを気付いていたので、一つの目標として目指していました。大山先生を数字の上で一つ先に行けたのは大変ありがたいことです」

 この日の相手は叡王の肩書を持つ。過去3勝7敗と苦手にしているだけに難しい戦いになるとみられていた。だが、午前10時の対局開始直前にちょっとした「追い風」が吹く。先に入室して下座を占めていた永瀬に上座への移動を促す。羽生自身は無冠なので当然の行動だ。着座位置が入れ替わる。当然、振り駒の歩5枚は永瀬側から採られ、なんと「と金」が3枚!有利といわれる先手を獲得したのは羽生だった。

 中盤まで難解な展開が続いたものの、攻めを促す永瀬の挑発的な一手を逆手にとった羽生は中盤以降徐々に優位を築き上げる。「なんとかバランスを取ることができた」。永瀬の徹底抗戦を一つ一つ丁寧に受けた結果、投了図は完勝を示していた。

 伝説の大山を超えた大きな一勝。それでも羽生は「その頃とは棋戦の数も時代背景も違う。大山先生の領域にどのくらい近づいたかといえば、今のところまだですね」と明かした。59歳まで王将位を保持。60歳でタイトル挑戦。この世を去った69歳の時点でA級に所属…など、48歳の羽生には到底及ばない怪物級の大先輩は、ターゲットとして大きな存在のままだ。

 「最近の将棋はやるべきことが多く、若くて強い人もたくさんいる。やることがたくさんある。それを前に進む原動力にしたい」

 頂点の先にはまだ道がある。誰も行かない道を進むのが羽生の役目だ。

 【おめでとう羽生九段】
 ▼中原誠16世名人 千里の道も一歩から。羽生さんの一局一局の積み重ねに感服いたします。

 ▼加藤一二三・九段 若手の台頭著しい将棋界にあって、この先もお一つまたお一つと白星を重ねられ、希代の覇者として将棋界のさらなる隆盛、発展に寄与されますことを心より願い、またますますの御活躍を心より御祈念申し上げます。

 ▼谷川浩司九段 先日私も対局しましたが、ますます「自在の境地」に達しておられると感じました。これからも将棋の無限の可能性を求めながら、勝ち星を重ねていかれることを願っています。

 ▼日本将棋連盟会長・佐藤康光九段 40代で新記録達成は驚異的であり、数字が全てを物語っているように感じます。体調にご留意され、今後とも末永いご活躍を祈念いたしております。

 ▼藤井聡太七段 心よりお祝い申し上げます。一局一局の積み重ねが1434勝という偉大な記録となり、これからもさらに重ねていかれることに深い感銘を覚えます。

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