“過熱!夜のニュース戦争”それでもテレ東「WBS」はブレず独自路線、ユーミン起用も経済目線で

[ 2019年6月5日 17:00 ]

テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の野口雄史プロデューサー
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 テレビ朝日を退社した小川彩佳アナウンサーがTBS「NEWS23」のメインキャスターに就任するなど、テレビ各局の“夜のニュース番組戦争”が過熱している。そんな中、スタンスを変えず我が道を進み続けているのがテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」(月~金曜後11・00)だ。経済に特化した独自のニュースはどうやって生まれるのか。番組プロデューサーの野口雄史氏(51)に聞いた。

 「常に考えているのは、どれだけ経済ニュースを面白い切り口で、深く分かりやすく報じられるかということ。裏番組に新鮮味や話題性が出た時は、自分たちも刺激を受けるのは確かですが“自分たちでよりよく、よりベストに”という思いが強くなります」

 「NEWS23」より1年早い1988年4月にスタートした、民放で一番長寿の報道番組。31年で番組名も、「経済に特化」というコンセプトも一度も変えず、独自路線を貫いてきた。「事件モノとか芸能ニュースを大きく扱うことはない。それがたとえ高視聴率が取れるかもしれないと思っても、です。それをやるとWBS(ワールドビジネスサテライト)ではなくなってしまいます」。目先の数字を追わずも、2018年度の平均視聴率は3%台と健闘している。

 切り口が独特だ。先月8日に園児ら計16人が死傷した大津の自動車事故。各局の裏番組が、事故がなぜ起きたのか検証や、遺族の悲しみなどを伝える中、WBSはペダルの踏み間違いによる誤発進を防ぐ「急発進防止装置」が自動車用品店で売れていることを真っ先に取り上げた。

 「うちは世間の関心を集めるニュースや事故、事件を全くやらないのではなくて、やっても切り口が違うんです」。この防止装置は運転手自身だけでなく、家族が心配して取り付けるケースが意外なほど多いことが番組の取材で判明。アクセルとブレーキの踏み間違いは70代以上の高齢者が多いと指摘されるが、反射神経の低下は50代から認められることも伝えた。

 「経済をどうやって仕事に役立てるか、消費者のためになるか、視聴者に役立つ経済ニュースを目指しています。大津の事故では“高齢者による自動車事故が増えている”という社会的なテーマが前段としてあって商品やサービスの紹介に入っていく。テーマを探すことが大事なんです」

 珍しいのは、報道番組なのに一定程度の録画再生率があることだ。他局の報道番組はほぼ0%だが、WBSは0・2~0・3%で推移。その理由について野口氏は「サラリーマン的な見方をしている人が多いんです」と明かす。どういうことか。

 その独特な視点による報道は、特に世の会社社長の関心を集めている。「社長が見るということは我々も見ておかないといけない」と、ある食品メーカー幹部。夜の会食接待が原因で番組を生で見ることができなかったこの幹部は翌朝、朝食を食べながら早回しでチェックしている。このような「サラリーマン的な見方」が録画再生率を上げているようだ。野口氏は「うちの社長が毎日見ているので、自分も見ています」と、会社役員らによく言われるという。

 4月から松任谷由実(65)がエンディングテーマ「深海の街」を担当している。驚くことにユーミンにオファーしたのも経済的な視点からだという。「ユーミンさんはバブル時代とかスキーブームとか、若者の消費に関連して市場を作ってきた人。昭和、平成を振り返るタイミングで、そういう経済目線でオファーしました」。ユーミンはかねてWBSのファンだったこともあって快諾し、平成最後の放送となった4月29日には特別企画「昭和・平成・令和と、ユーミンと。」に登場した。報道番組に出演するのは初めてで、野口氏に「また出てもいいよ。楽しかったから」と話したという。

 どこまでも経済に特化する独自路線。各局がバチバチと“キャスター戦争”を繰り広げても「うちには大江がいます」と自信をみなぎらせる。6日は、大江麻理子キャスター(40)にスポットを当てた記事を配信する。

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