豊島八段 逆襲2勝目 歩の連打で逆転、反撃の一石二鳥決めた

[ 2018年3月8日 05:30 ]

第67期王将戦7番勝負第5局第2日 ( 2018年3月7日    島根県大田市・さんべ荘 )

王将戦第5局第2日 地元の石見神楽で使われる羽織を着て、神楽の一場面の大蛇の首を切り落とす豊島八段
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 カド番の豊島将之八段(27)が96手で久保利明王将(42)に勝ち、対戦成績を2勝3敗とした。均衡を保った2日目、豊島が自陣の傷も消す一石二鳥の歩、さらに歩の連打から反撃開始。攻防の端角(58手目[後]9五角)で久保陣を攻略した。第6局は14、15日に松本市の松本ホテル花月で開催される。

 安いはずの歩が大きくものをいった。1日目の進行を「まずそう」と語った豊島。自陣をにらむ久保銀に42手目[後]3四歩(第1図)で退去を促した。桂を打たれるスペースまで消す一石二鳥の歩から反撃は始まった。

 「(3四歩と)1本入ってやっと王が安定しました」

 さらに52手目[後]7七歩。[先]同金と取らせて[後]7六歩の連打。

 [後]3四歩の次の手に52分、[後]7七歩には31分。久保の混乱を物語るように消費時間は増えていった。「細かい技で王を固めての反撃でした。うまい手順だったと思います」。形勢を挽回した小技の積み重ねを解説の稲葉陽八段(29)は称賛した。

 豊島とは小学時代からのライバル。挑んでははね返されたとはいえ、2010年度王将戦を含む3度のタイトル戦出場を稲葉は刺激としてきた。

 稲葉も昨年、名人初挑戦。史上初、6人によるプレーオフに突入した今年の名人戦挑戦権争いでは、前年度順位から最短距離にいる。

 藤井聡太六段(15)の台頭に羽生善治竜王(47)の永世7冠達成。今年度、20代タイトルホルダーが2人誕生したものの棋界の主導権を奪うまでには至らない。日本将棋連盟前会長の谷川浩司九段(55)は藤井が朝日杯オープンを制した先月、「20代、30代の棋士に対しては“君たち、悔しくないのか”と言いたい気持ちもあります」との談話を出した。

 稲葉は「厳しく言われるのは当然。悔しいと思う気持ちがないと上には行けません」とし、同様の心情は豊島にもあると推し量る。羽生世代の復権も藤井の躍進も許さない。20代の意地が背水の陣を敷く豊島に託されている。

 ▼豊島将之八段 封じ手の辺りは形勢判断が難しいが、自信はなかった。(勝ちを意識したのは70手目)[後]1五歩と突いたあたりから。(2勝3敗に)厳しい状況は変わらないが、ベストを尽くしたい。

 ▼久保利明王将 先手なので積極的にいこうと思っていた。(豊島の52手目[後]7七歩は)きつかった。歩が入ってからはまずそう。(活用しきれなかった39手目[先]3六角は)他にも有力な手があったかもしれない。第6局へ、切り替えてやりたい。

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