ロッテ球場アナウンスを卒業する谷保恵美さん、原点は札幌大マネジャー時代「褒められて、その気になった」

[ 2023年12月19日 12:25 ]

ロッテの場内アナウンスを担当して33年。今季限りで、卒業した谷保恵美さんは、帯広出身の道産子
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 プロ野球界に、今季限りで引退した道産子レジェンドがいる。ロッテの場内アナウンスを33年間担当した谷保恵美さんだ。今季最終戦のオリックス戦で公式戦通算2100試合を達成し、1894試合連続担当は、まさに金字塔だ。ロッテ、日本ハムの番記者を経験した北海道支局・横市勇支局長が故郷、野球、アナウンスなどへの思いを聞いた。

 11月29日。谷保さんとZOZOマリンで会う約束をしていた。当日、札幌の自宅で起床。スマートフォンを手にし、SNSに目をやると、「谷保さん」の名前がトレンドに挙がっていた。

 内容をチェックすると、朝の情報番組に出演したという。飛行機に乗って、午後5時半に対面。すでに、外は真っ暗だ。「朝からトレンドになっていましたね」と聞くと、谷保さんは苦笑いだった。

 「たまたま、『ZIP!』(日本テレビ)の取材を受けちゃって…。友達とご飯を食べて、銀座を歩いていたら、“ちょっと、冷え性対策についてお話を聞いてもいいですか”って。話しているうちに、もしかしたらってなっちゃって…」

 偶然取材された野球と無関係のテレビクルーにも、その美声は隠しきれない。谷保さんは球団の枠を超えた存在なのだ。「4番・ライト、サブロ~~~~~」。独特なアナウンスは超有名だ。帯広三条、札幌大女子短大でもマネジャーとして野球部に飛び込んだ。理由は場内アナウンスに憧れていたからだ。

 「高校でもやりたかったけど、マネジャーは公式記録員だった。アナウンスは放送部がやっていた。だから、大学にはリーグ戦があって“マネジャーになるとアナウンスができる”と聞いたら“やらせてください”って、ドアをコンコンと叩いていましたね」

 21年の「NPB AWARDS」ではプロ野球の発展に携わってきたことが評価され、「球団功労賞」の表彰も受けた。そんなレジェンドにとっては、デビュー戦での成功体験が大きい。

 「最初に場内アナウンスをした日に、部長先生が凄く褒めてくれた。“恵美ちゃん、うまいね。間が凄くいいよ”って。人間、褒められるとその気になるじゃないですか」

 短大卒業後は、実家の仕事を手伝ったり、北海道庁、帯広市役所で臨時職員も務めた。忙しい日々の中でも、野球から離れることはなかった。

 「当時、北海は男子校で当番校になると、アナウンスを探していたので“はい、やります”と手を挙げていました。北海専属で遠征にも行きましたね。社会人も、たまにやらせてもらいました」

 短大時代はグラウンドで球拾い、窓口のチケット販売、電話番もした。道産子球児の聖地ともいえる札幌円山には、谷保さんの青春も詰まっている。

 ◇谷保 恵美(たにほ・えみ)北海道帯広市出身。帯広三条で野球部マネジャー、札幌大女子短大でも札幌大野球部マネジャーを務める。90年にロッテオリオンズ入社。91年8月に1軍デビュー。96年10月1日の近鉄戦からは1試合も休まず、場内アナウンスを担当した。

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