阪神・村上 「このバッターでいく」坂本に言われギアUP 本家「村神様」斬りで決めたリーグタイ記録

[ 2023年5月10日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神0ー1ヤクルト ( 2023年5月9日    甲子園 )

<神・ヤ>7回無死、サンタナに先制の本塁打を浴びた村上(撮影・平嶋 理子)
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 阪神は9日、ヤクルトに0―1で惜敗し、連勝は3でストップした。先発した村上頌樹投手(24)が、6回まで零封して開幕からの連続無失点イニングを「31」まで伸ばして63年の中井悦雄(阪神)のセ・リーグ記録に並んだものの、新記録を目指した7回、先頭のサンタナに決勝ソロを被弾。7回1失点の快投も実らず今季初黒星を喫した。今後も先発の柱として期待される右腕。この悔しさをバネに強くなる。

 60年ぶりに歴史の扉を開いた先に、ホロ苦い結果が待っていた。村上が天を仰いだのは、0―0で迎えた7回。先頭で対峙(たいじ)したサンタナを丁寧に外角中心の投球で追い込みながら、内角を狙って投じた5球目の直球だけ、わずかに甘くなった。

 「本当に、投げきれなかったのは失投です。先制点が大事な試合だったのでそこで先に相手にあげてしまったのがダメだなと」

 失速を願うファンの悲鳴とは裏腹に打球は左中間スタンドに着弾し、無失点を続けてきた24歳は一発に沈んだ。「そこまでは良くなかったんですけど、そこで粘れたのは良かった」。過去3戦の先発に比べれば制球はややバラつき、高めに浮くボールもあった。それでも、連打で背負った2回無死一、二塁のピンチではオスナをフォークで空振り三振に斬るなど後続を断って無失点。粘りながら5回までスコアボードにゼロを並べた。

 開幕からの連続無失点イニングを30まで伸ばして上がった6回のマウンド。2死一塁で本家「村神様」を迎えると、間を取ってマウンドに来た捕手・坂本に「このバッターでいく(勝負する)」と言われ、「打ち取るぞ、という話をした」。ギアを一段階上げて腕を振った。2球で追い込むと、最後は4球目のアウトローへの直球が決まって見逃し三振。「絶対に打たせてはいけないという感じだったので、投げ切れたのは良かった」。最高の形で、阪神の大先輩でもある右腕・中井悦雄のセ・リーグ記録に肩を並べた。

 「それ(記録)は自分一人の力じゃないのでキャッチャーの人たち、野手の皆さんが今日も守ってくださいましたし、そのおかげだと思います」。頼れるチームメートたちの力の結集でたどり着いた境地だからこそ、勝利につなげたかった。

 「(初失点は)何も気にしていない。負けてしまったので次に生かしたいと思います」

 予告先発が2戦連続で中止となる“連続スライド”でも、4戦連続のハイクオリティースタート(7回以上、自責点2以下)と十分に仕事を果たした。「ちょっとしたズレもあったので、次に向けて修正したい」。1週間後にやってくる出番で会心の白星を挙げ、この夜の悔しさを払拭する。(遠藤 礼)

 ○…村上(神)が7回、サンタナにソロ被弾。今季初失点で、開幕からの連続イニング無失点は、この試合6回までの31イニングでストップ。63年中井悦雄(神)のセ・リーグ記録に並んだ。プロ野球で開幕から30イニング以上無失点は、1リーグ時代の39年、高橋敏(阪急)のプロ野球記録38イニング1/3、21年平良(西)のパ・リーグ記録38イニングに次ぎ、前出63年中井の31イニングに並ぶ4人目。

 《中井悦雄という男》中井は1943年(昭18)6月24日生まれの右腕投手で、関大を中退して63年に阪神に入団。同年9月7日の巨人戦でプロ初登板した。2試合の救援(3イニング)を経て、初先発の9月19日大洋戦から3戦連続の完封(27イニング)。続く10月17日の広島戦の2回、藤井弘にソロを打たれるまで、デビューから31イニング連続無失点に抑えた。

 1年目は7試合に登板し4勝1敗、防御率1・22。さらなる飛躍が期待されたが、翌64年の5月22日に交通事故で右肩を負傷した。これが投手生命に響き、阪神では65年までの実働3年で登板19試合、5勝3敗。68年オフに西鉄へ移籍した。71年限りで現役を引退し、通算109試合で9勝6敗。79年、阪神の2軍投手コーチ補佐に就任したが、同年8月23日、心不全のため36歳の若さで急逝した。

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