【内田雅也の追球】一発攻勢支えた「基本」堅い守備と投手陣の好投があってこその勝利

[ 2023年5月6日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5ー0広島 ( 2023年5月5日    マツダスタジアム )

<広・神>4回、堂林の打球を二塁へ送球する木浪(撮影・岸 良祐)
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 大リーグの名将、アール・ウィーバーは「野球に勝つ鍵」として「投手力と基本、そして3ラン」を信条としていた。

 1960―80年代、オリオールズ監督としてリーグ優勝4回、ワールドシリーズも制した。監督通算1480勝。野球殿堂入りしている。

 盗塁やヒットエンドラン、バントは好まなかった。「1点しか取りにいかなかったら、1点しか取れないではないか」。3ランは一つの例えで走者をためての長打の可能性にかけていた。

 このウィーバー理論は2003年発売の『マネーボール』で再び脚光を浴びた。主人公のアスレチックスGMビリー・ビーンも小技は使わず、出塁率や長打率を重要視していた。

 本塁打攻勢に投手陣の好投、堅い守備……はこの夜の阪神に通じる。

 1回裏2死一、三塁から一塁走者飛び出しの重盗封じは一塁手・大山悠輔が落ち着いていた。三塁走者の本塁突入を警戒し挟撃で刺した。3回裏無死一塁では木浪聖也が三遊間の難しい打球を処理し併殺に仕留めた。4回裏は新外国人、初出場の巨漢ヨハン・ミエセスが右中間大飛球をランニング好捕した。木浪は再び三遊間ゴロを好守でさばいた。木浪は9回裏先頭の不規則バウンドも難なくさばいた。

 2ラン、2ラン、ソロと派手な一発攻勢が目立つが堅い守備があってこその勝利である。この夜も無失策で今季のチーム失策数11はヤクルトと並んでリーグ最少である。

 ウィーバーの言葉は日本語でよく「守備力」と訳されるが、英語では「fundamentals」、つまり「基本」だった。岡田彰布が昨秋就任以来、繰り返してきたのも基本の徹底。選手に難しい要求はしない。

 大山悠輔が7回表、0ボール―2ストライクから4球続けてボール球を見極めて四球で歩いた自制心も「好球必打」の基本である。一方、本塁打後の打席でボール球に手を出した佐藤輝明を岡田は会見で戒めている。

 ウィーバーは激情家で審判への猛抗議で通算退場回数は97回にのぼる。ただし、選手の気持ちをよく理解する指揮官だった。岡田も選手の心に寄り添う。2月の沖縄キャンプ中、ミエセスについて「守備も懸命にやろうとしている。日本で成長していけばいい」と温かく、その姿勢を評価していた。 =敬称略=(編集委員)

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