日本ハムの新球場が天然芝にこだわった理由 前沢取締役「華美な装飾品には代えがたい価値がある」

[ 2023年3月2日 08:00 ]

1日、新球場エスコンフィルード北海道で初練習を行う選手たち
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 球場に入ると、天然芝の心地よいにおいがした。1日に日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」で行われた初練習。中堅方向にそびえ立つ約70メートルのガラスの壁よりも、世界初の球場内天然温泉・サウナ施設よりも、今の北海道では感じられない「におい」に感動した。

 約5年前の2018年。発表された新球場の完成予想図を見て驚いた記憶がある。積雪と切っても切り離せない北海道に、天然芝の球場を建設すると言うのだ。プロ野球の開幕はまだ雪が残る3月下旬が多い。過去に例のない計画に設計施工を担う大手ゼネコン・大林組の十河潔司主席技師(54)は「僕も初めてトライするということで、不安が80%だった」と振り返る。

 それでも19年10月から3年間、新球場の横で寒冷地での天然芝管理維持方法を検証。グローライト(人工ライト)と地温コントロールを活用し、芝の越冬ができるか。芝を育てつつ、コストも下げられるラインの見極め。同時にホームゲームの試合数と同様に年70回ほど、芝の上でスパイクで足踏みやダッシュを実施して芝の耐久性を調べ、前例のないミッションをクリアした。

 なぜ、そこまで天然芝にこだわるのか。新球場の運営会社「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」の前沢賢取締役事業統轄本部長は「お金も人もかかるが、やっぱり選手たちが滑り込むのをちゅうちょするような球場は嫌。選手たちだって30年プレーできる選手はいない。本当に短い時間の中で輝ける人たちにとってプラスになりたいというのが1番」と説明。さらに「単純に天然芝はいいにおいがするし、球場の雰囲気をつくるにはお金に換えがたい。華美な装飾品には代えがたい価値があると思っていて。これは是非、いろんな人に見てもらいたい、体験してもらいたいなと思いますね」と続けた。

 多くの人間や企業が協力し、完成した国内初となる開閉式屋根の天然芝球場。前沢取締役が言っていた意味が、ようやく分かった気がした。(記者コラム・清藤 駿太)

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2023年3月2日のニュース