ヤクルト・村上 世界一奪還へ大谷動画がモチベーション「目標はもっと上にある。全然満足していない」 

[ 2023年2月15日 05:03 ]

記念撮影に応じる村上(撮影・沢田 明徳)
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 3月のWBCで侍ジャパンの4番として期待されるヤクルト・村上宗隆内野手(23)がインタビューに応じた。決勝戦で決勝弾を放った21年東京五輪での8番から、大きく立場を変えて臨む大一番。少年時代から憧れた舞台に上がり、4番として14年ぶりの世界一奪還へ導くことを力強く宣言した。15日には練習試合・ロッテ戦(午後1時開始・糸満)に臨み、「令和の怪物」佐々木朗希投手(21)と「令和の3冠王」が最終調整で激突する。(取材構成・青森 正宣)

 WBCで日の丸を背負いたい――。村上は小学校の卒業文集につづった大きな夢を実現させた。

 「覚えています。書きました。小さい頃から日の丸を背負ってプレーしたかった。凄くうれしいけど、僕の野球人生は長いので、今の目標はそこじゃない。もっと先にある。一つの小さな壁として壊していきたい。日本中を背負って、注目されて、それに打ち勝って優勝することを目指して頑張りたい」

 日の丸に憧れを抱いたのは9歳の時。09年の第2回WBCだ。決勝の韓国戦でイチローが中前に放った決勝打が脳裏に刻まれた。

 「野球チームの集まりがあって、みんなで公園でガラケーのワンセグで見ていました。凄く興奮した」

 あれから14年。WBC日本代表に初めて選出された。野手最年少ながら4番として期待されるほどの実績を積んだ。史上最年少21歳7カ月で100号到達、日本新の5打席連発、日本選手最多56本塁打、史上最年少22歳で3冠王…。スター街道を駆け上がっているが、高校時代の恩師である九州学院・坂井宏安監督から授かった「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」の言葉を胸に雌伏の時を過ごしたからこそ、今がある。

 「順風満帆に見えるのはプロに入ってから。中学、高校の時は日の丸を背負えなかった。甲子園で注目されたのは清宮(早実、現日本ハム)や安田(履正社、現ロッテ)で輝いて見えた。でも僕の目標はもっと上にある。全然満足していない。一つ一つ壁を破るために必死に取り組んでいる」

 努力を重ねて、国際大会で初めて日の丸を背負った21年夏の東京五輪では8番だった。決勝の米国戦で決勝ソロを放つなど金メダル獲得に貢献。中心選手の自覚を口にする。

 「オリンピックとは立場が違う。日本中の期待もそれなりにあると思う。ただ、勝ちに向けてやることは変わらない。自分の足元を見つめ直して。今までやってきたことを生かしながら、変えるところは変えて。引き出しは持っている方だと思う。パフォーマンスを最大限出すためにどういう集中力で、ピッチャーによってどういうアプローチをすればいいのか。日本の試合もそうやっている。変わらずにやりたい」

 1月の自主トレ中には「4番を打ちたい」と自ら口にした。

 「強化試合で4番を打たせてもらって、日本の4番を打てる喜びを感じた。打ちたいなと思っていたので、ただ、そう言っただけです」

 今大会は各国、大リーガーが多数出場。史上最高の大会の呼び声が高い。

 「米国のマイク・トラウト選手(エンゼルス)、クレイトン・カーショー選手(ドジャース)、ムーキー・ベッツ選手(ドジャース)、挙げたらきりがない。全ての選手が楽しみ。戦って勝てるように頑張りたい」

 将来的なメジャー挑戦を掲げる背番号55にとって、誰よりも刺激を受けているのは、チームメートとなるエンゼルス・大谷だ。

 「大谷さんの打撃動画をよく見ます。参考になりますし、モチベーションになる。野球選手として誰がどう見ても凄い。自分のモチベーションが下がりそうな時に見ます」

 昨季、55号を放ってから足踏みしていた際には「押しつぶすぐらいプレッシャーをかけてもらいたい」と言ってのけ、シーズン最終戦で56号を放ってみせた。有言実行してきた男も、一人の人間だ。

 「緊張もしているし、不安だらけで怖い。でも代表で試合に出る以上、やるしかない。結果を出せる準備をしていきたい。自分はできると信じてやっている。できないことは言わない。いろいろ経験してきた中で、言っている。決して高い目標ではなく、自分の手が届くような目標を言っている。スーパープレーヤーがたくさんいる。素晴らしい選手が集まった。チームとして勝てるようにやっていければと思います」

 ◇村上 宗隆(むらかみ・むねたか)2000年(平12)2月2日生まれ、熊本県出身の23歳。九州学院では1年夏に甲子園出場。17年ドラフト1位でヤクルト入団。19年に36本塁打、96打点で新人王、20年に最高出塁率、21年に本塁打王を獲得。22年は日本選手最多のシーズン56本塁打、打率.318、134打点で史上最年少での3冠王。2年連続でセ・リーグMVPを受賞した。21年東京五輪日本代表。1メートル88、97キロ。右投げ左打ち。

 ≪「必死に頑張った中で」“先輩”バレと対戦熱望≫元チームメートのオランダ代表・バレンティンとは、準々決勝で対戦する可能性がある。「当たるなら準々決勝。僕らも負けずに、必死に上を目指して頑張った中で戦えたら凄くうれしい」と話した。18、19年とともにプレー。プロ野球最多年間60本塁打の記録を持つ先輩に助言をもらい、成長してきた。村上のことを「MY BOY」と可愛がるバレンティンも昨秋、本紙の取材に「台湾で勝ち上がれたら次のステージは日本。フィールドでMY BOYに再会したいね」と対戦を待ち望んでいた。

 【取材後記】村上は何を言っても大言壮語に聞こえない。公言してきた高い目標をいずれも達成してきたからだ。これほどまでに有言実行する人を、記者は見たことがない。2年連続最下位だったチームにあって「優勝チームの4番になりたい」と言い続け、21年にリーグMVPの活躍で20年ぶりの日本一に導いてみせた。その年の契約更改で掲げた「打率3割、40本塁打、100打点」の目標を翌年にいずれもクリア。「全てタイトルを獲れるなら獲りたい」と言葉を実現させ、令和初の3冠王に輝いた。合同インタビューでの「自分はできると信じてやっている。できないことは言わない」。説得力しかなかった。(ヤクルト担当・青森 正宣)

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