【内田雅也の追球】岡田監督の若手育成「技心体」まず最初に技術を教えるメリットがある

[ 2022年11月1日 08:00 ]

笑顔で秋季練習を見守った岡田監督(撮影・岸 良祐)
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 甲子園球場での秋季練習の合間、阪神監督・岡田彰布はふと「それにしても」と言った。「ユニホームを着ていると、体力が戻ってくるよ」

 オリックス監督時代の2012年9月22日、京セラドームでユニホームを脱いでから10年。野球評論と酒とゴルフと……の日々から、愛着あるタテジマのユニホームをまとい、気力も高まってきたのだろう。

 約1週間の秋季練習を打ち上げた。きょう1日には高知入りし、2日から安芸で秋季キャンプに入る。若手主体33人のメンバーも発表された。

 体も心も高まってきた岡田は楽しみにしている。宮崎でのフェニックスリーグに参加していた選手も多い。まだ見ぬ若手の可能性をみている。

 <若い選手は秋季キャンプの3週間で伸びる。すごく、伸びる>と著書『そら、そうよ 勝つ理由、負ける理由』(宝島社)に記している。

 そして「心技体」という言葉を「技心体」と言い換えている。はじめに「技」なのだ。昔からよく聞いた岡田の若手育成の基本姿勢である。

 <1軍に行くには最低限このぐらいのことができないと戦力にはならないという技術を教えてやることが最初だと思う。すごい技術を教えてやると、選手の食いつき方が違う。そこで興味を持てば、練習にもより身が入るようになる>。

 勉強も同じである。受験勉強の方法論として「いきなり入試問題を解く」と喜多川泰『手紙屋 蛍雪編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)にある。英文問題で、まずは単語からと思っても<辞書を全部覚える日は絶対に来ない>。

 基礎から段階を……と部分を積み重ねるより、全体から理解するべきと野口悠紀雄『「超」勉強法』(講談社)にある。山を登るのに一歩一歩……ではなく「鳥の目」となって全体を把握する。<上から見れば、よく見える>からだと説く。一方で<基礎は退屈で難しい>。面白くないのだ。

 岡田も基礎の<体づくり>について<そういう単調な練習は選手もなかなか興味を持たない>と書いている。1軍レベルやピラミッドの頂上を先に知れば、今の自分との実力差もわかり、努力の方向性も見えてくる。

 <若いうちは技術も吸収力が高い><後々の伸びにつながる>と、まずは「技」から入ることだろう。=敬称略=(編集委員)

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2022年11月1日のニュース