中畑清氏 日本シリーズの潮目変えたオリックス・宇田川こそ真のMVP

[ 2022年11月1日 05:30 ]

オリックスの宇田川
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 【キヨシスタイル】熱かったぜ、今年の日本シリーズ。人数制限がなくなって満員のお客さんが見つめる中、どの試合も1点を争う展開でさ。最後まで目が離せなかった。

 2敗1分けから4連勝で去年の雪辱を果たしたオリックス。2試合で決勝打を放った杉本の貢献度も大きかったけど、真のMVPは宇田川だと思うね。

 ようやく1勝目を挙げた第4戦。1―0で迎えた5回、1死三塁で先発の山岡に代わって登板してさ。山崎、山田を連続三振。同点のピンチを切り抜けた。

 回またぎとなった6回も2四球と暴投で1死一、三塁としながらサンタナ、中村を連続三振。これでヤクルトの勢いをピタッと止め、7回からは山崎颯、ワゲスパックとつないで1点を守り切った。これでシリーズの潮目が変わったんだ。

 宇田川は第6戦も1―0の6回1イニング、第7戦は5―0の6回から2イニングを無失点。4試合5回2/3を投げて1点も失うことなく、10三振を奪った。150キロを超える真っすぐにお化けフォーク。この剛腕が育成出身で、今年の7月末に支配下登録されたばかりというんだから驚きだよ。

 中嶋監督の采配も見事だった。第1戦で平野佳、第2戦で阿部が打たれると、抑えにワゲスパックを回した。その上で第4戦で回またぎをさせた宇田川と山崎颯を、第5戦ではベンチから外すんだよね。勇気ある決断。私にはとてもできない判断だ。その試合は3―4と逆転された6回途中から阿部、平野佳、ワゲスパックとつないで追加点を許さず、9回の逆転サヨナラ勝ちに結びつけた。

 山本由伸が第1戦で左脇腹を痛めるという不測の事態を乗り越えての日本一。中嶋一家というのかな。短期決戦で機を見るに敏の配置転換。その期待に応える選手。監督と選手の深い信頼関係を感じたね。

 由伸が16年ドラフト4位なら、山崎颯は同じ年の6位指名で高校から入団。宇田川は20年育成3位で大学から入った。同い年の3人。つくづく思う。入団の仕方はさまざまだけど、入ってしまえば本人の努力と指導者との出会いなんだよね。チーム一丸。心を一つにして上り詰めた頂点。本当におめでとう。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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2022年11月1日のニュース