異例の球宴 でも紛れもなく夢の祭典だった

[ 2022年7月30日 08:00 ]

オールスター第2戦 初回、ヤクルト・村上に安打を浴びるロッテ・佐々木朗
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 コロナ禍による辞退者の続出により、開催自体に否定的な意見もあった球宴。だが、1試合だけでも現地で取材した身からすると、紛れもなく夢の祭典だった。

 松山開催となった第2戦を取材した。NPBの球団はないが、野球熱が高い土地として知られている通り、街全体が球宴一色。練習から盛り上がっていた。印象的だったのは、打撃練習への反応だ。軽々とスタンドへ放り込む選手たちの一挙手一投足に食い入るように見つめる野球少年・少女。巨人・ウォーカーや西武・山川の打球にどよめきが漏れていた。

 ヤクルト・村上の言葉が胸に響いた。「結果を残さないと出場できない。凄く自信になりますし、誇りに思う。オールスターで毎年、毎年選ばれるということは僕の目標でもある」。ファン投票、選手間投票など選出方法はさまざまだが、結果を残さないとファンの印象には残らない。たとえ代替出場でも、結果を残しているから選ばれる。

 ただの「代役」はいなかった。ロッテ・小野は150キロ台後半の直球でセ・リーグの強打者を圧倒。ウォーカーも、球宴の主役だったロッテ・佐々木朗の162キロの直球を中前にはじき返した。西武・本田も球宴では異例の連投で無失点。しっかりと結果を出し、球場を沸かせた。

 全パ・中嶋監督の起用も粋だった。プランスワン投票で選出され、第1戦でMVPを獲得した日本ハム・清宮を、一塁だけでなく三塁と左翼でも起用。辞退となった野村と松本剛のポジションを守らせた。レギュラーシーズンでは見ることのない姿。球宴ならではではあるし、しっかりと打球を処理した清宮もさすがだった。

 ホームランダービーで守備に就いていた山川が、ボールを一個一個、丁寧にスタンドに投げ入れていた姿が忘れられない。サインが書かれていなくても、プロ野球選手が一度でも触れたボールは宝物。松山の子供たちにとって、そのボールは今後野球を頑張るための原動力になるはずだ。日本ハム・伊藤の画面から消える超スローボールや山川のフリップ芸など、プレー以外でも見どころはたくさんあった。

 異例の球宴。だが、出場全選手が間違いなく夢を与えていた。(記者コラム・小野寺 大)

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2022年7月30日のニュース