オリの“鉄人”吉田正にしびれた!骨折から復帰で見事なサヨナラ打 悪性リンパ腫と闘う鉄人にも届けた

[ 2021年11月21日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2021第1戦   オリックス4-3ヤクルト ( 2021年11月20日    京セラD )

<オ・ヤ>9回サヨナラ打を放った吉田正(中央)(撮影・成瀬 徹)
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 「SMBC日本シリーズ2021」が20日に京セラドームで開幕し、オリックスが逆転サヨナラでヤクルトに先勝した。9回に2点差を追いつき、なお無死一、二塁から吉田正尚外野手(28)が中越えの決勝二塁打。25年ぶりの日本一へ、白星発進を決めた。エースの山本由伸投手(23)が6回112球で降板する劣勢を全員野球ではね返し、パ・リーグ球団として13連勝&本拠地20連勝へ伸ばした。

 誰よりも頼れる男だ。劇的なドラマは9回に待っていた。宗の中前打で2点差を追いつき、なお無死一、二塁。吉田正が一振りで決めた。マクガフの初球、高め153キロ直球を捉え、中堅手の頭上を越えるサヨナラ二塁打だ。ナインから歓喜のウオーターシャワーを浴び、びしょぬれになって白い歯を見せた。

 「いや~、しびれました。宗がこれ以上ないくらい球場を盛り上げてくれたので、その勢いでいきました」

 9月上旬に左太腿裏痛で離脱し、復帰直後の10月2日には右尺骨骨折。絶望的な状況から驚異の回復力を見せ、CSファイナルSから戦列に戻った。6年目でつかんだ頂点への挑戦権。腰痛に悩まされ治療に励んでいた16年オフから見据えていた大舞台だ。

 「シーズン143試合に加えてCS、日本シリーズとなれば160試合近く戦うわけで、シーズンを通して戦い抜く、故障しない体づくりが大事になる」

 思い浮かべるのは「鉄人」の姿。1492試合フルイニング出場の金本知憲(広島、阪神)が左手首を骨折して右手だけで2安打した場面を鮮明に覚えている。衣笠祥雄(広島)に次ぐ歴代2位1939試合連続出場を成し遂げ、今季限りで引退するロッテ・鳥谷の勇姿もまぶしかった。

 「やっぱり金本さんと鳥谷さん。鉄人って言われて、何年も試合に出続けるのは本当にすごいこと。僕は1、2年目にケガをして、どうしても体が弱いというイメージが付いてしまった。見返したいという思いだった」

 悪性リンパ腫と闘いながら東京五輪の成功に尽力した「鉄人」にも届けたい思いがある。陸上男子ハンマー投げの04年アテネ五輪金メダリストで、スポーツ庁長官の室伏広治氏。16年オフに吉田正が直筆の手紙を送り、飛距離向上と故障防止を求めて師事してきた。

 「本当に室伏さんの指導のおかげで戦えている。抗がん剤治療の影響なのか、前に見た写真の表情はちょっと…。それでも室伏さんは絶対に弱音を吐かない。自分はもっと、やらないといけない」

 絶対エースの山本で初戦を落とせば、シリーズの主導権を奪われる窮地だった。帰ってきた主砲が最高のスタートに変えた。「待ちすぎですもんね。ここからいきます」。25年ぶりの頂点へ。その姿は「鉄人」と言っていい。 (湯澤 涼)

 ○…オリックスの日本シリーズ出場は13度目で、初戦の成績は6勝6敗1分けの五分となった。なお、過去71度の日本シリーズで先勝したチーム(△○を含む)は45度優勝しており、V確率は63%。

 ○…オリックスが9回裏に1―3から3点を奪い逆転サヨナラ勝ち。日本シリーズのサヨナラ試合はソフトバンクが18年広島第5戦(○5―4)で記録して以来40度目。オリックスでは阪急時代の69年巨人第2戦(○2―1)以来52年ぶり2度目になる。また、シリーズで最終回に2点差以上のビハインドをひっくり返した逆転サヨナラ勝利は松竹が50年毎日第3戦(4―6→○7―6)で2点差を逆転したのに次ぎ71年ぶり2度目。初戦では最大の逆転劇になった。

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