東京五輪野球に見た「異文化」 なぜ稲葉監督は四角をつくり、米・ソーシア監督は両耳を手で覆ったのか

[ 2021年8月10日 08:00 ]

<日本・米国>試合後、健闘をたたえ合う稲葉監督とソーシア監督(撮影・会津 智海)
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 東京五輪で、同じ競技の中にある「文化の違い」を感じた。野球米国代表のマイク・ソーシア監督のジェスチャー。7日に行われた日本代表との決勝で、リプレー検証を求めた際のことだ。

 審判に対して、両耳を両手で覆うようなポーズをした。日本のプロ野球では見られない光景だった。多くのNPB監督は、両手で空中にテレビ画面の四角をつくるような仕草をする。稲葉監督もそうだった。なぜ、このような違いが起こるのか。

 18年に導入されたNPBのリプレー検証「リクエスト」は、審判自ら球場内の別室に集まり、自身の目で映像を確認して再判定を下す。そのため、日本の監督はビデオ映像を「見る」ことを審判に求め、両手で四角をつくる仕草の習慣がある。

 一方で、メジャーのリプレー検証「チャレンジ」は、全30カ所の各球場から送られてくる試合映像を、ニューヨークに設置したオペレーション・センターで確認する。現場の審判は、本職が審判であるビデオ判定員からの判定を「聞く」ことになる。だから、メジャーの監督は、ヘッドホンを両手でつくるようなジャスチャーが一般的だ。

 東京五輪はメジャー方式のリプレー検証を実施した。ソーシア監督はメジャーの習慣が出て、稲葉監督はNPBの習慣が出たわけだ。別の判定員がVTRを「見て」、審判が判定を「聞く」のだから、両者とも正しいジャスチャーと言える。

 「同競技」の中の「異文化」。ちょっとした動作にも、世界各国からアスリートが会するスポーツの祭典ならではの一幕が垣間見えた。(記者コラム・神田 佑)

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2021年8月10日のニュース