ヤ軍投手事情、ラメーヒューとの再契約…マー君去就決定まで時間がかかりそうな気配

[ 2020年12月17日 09:00 ]

ヤンキースの田中将大
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 オフシーズンも半ばに近づき、最近では、FAとなっている田中将大(32)投手はヤンキースに残留しないのではないかという論調の報道が増えてきている。12月8日には地元の「SNY・TV」が「ヤンキースの投手補強はまだ始まっておらず、田中との再契約も疑わしい」というオンライン記事を掲載した。13日には、「nj・com」のベテランコラムニスト、ボブ・クラピッシュ氏が「田中にお別れを言う準備をしておこう」というコラムを掲載。15日のリモート会見では、現地メディアからアーロン・ブーン監督に「田中と生え抜きの外野手ガードナーがいないヤンキースを想像できるか」といった質問も飛んだ(ブーン監督は「そうはならないことを願っている」と返答」)。

 ヤンキースと田中の再契約が微妙になるのは、想像できないことではなかった。今季は10度の先発機会中、9試合で自責点3点以下と安定していた田中だったが、ポストシーズンでまさかの2戦連続炎上。それまで圧倒的な強さを誇ったプレーオフで結果が出なかったのは痛く、強気に交渉できる材料が減ったのは事実だろう。

 もっとも、現時点で話が進んでいないからといって、「お別れを言う」のは少々早すぎるのではないかとも思える。盛んに報道されている通り、今オフのヤンキースの最優先課題は2年連続でMVP級の働きを見せた二塁手ラメーヒューとの再契約。また、メジャー全体の投手市場は、最大の目玉であるナ・リーグのサイ・ヤング賞投手、バウアー(レッズからFA)の去就に左右されるところが大きい。そういった事情を考えれば、今オフのFA選手の中ではいわば「第2、第3グループ」に属している田中との交渉が始まっていないのは、それほど驚くべきことではない。

 既にヤンキースのローテーションが埋まっているというのであれば話は別だ。しかし、田中、パクストン、ハップがそろってFAになり、トミー・ジョン手術を受けたセベリーノの復帰は早くても来年6月。エースのコール以外、現時点で穴だらけというのが現実である。

 「今季、多くの若手投手が投球の機会を得て、将来性を示した。オフはまだあと2カ月残っており、キャッシュ(ブライアン・キャッシュマンGM)は投手陣を補強しようと努めている。ただ、(補強は)どうなるかは分からないから、現在の戦力で準備しておかなければいけない」

 ブーン監督はそう述べてはいたものの、コールに続くのがモンゴメリー、ガルシア、シュミット、キング、出場停止処分明けのヘルマンといった陣容ではあまりにも不安だろう。今後、実績ある投手を補強しないまま開幕に臨むとは考えにくい。田中をはじめとするベテランとの交渉は、単にまだ始まっていないというだけではないか。

 もちろん最終的に田中との再契約が見送られる可能性は十分ある。新型コロナウイルスによる影響を受けたヤンキースは緊縮財政を目論んでいるとされ、田中との高額での複数年契約は難しそう。それでもラメーヒューとの交渉が不調で財政的に多少の余裕ができた場合、あるいはヤンキースでの勝利にこだわる田中が比較的安価の契約を了承した場合、ヤンキースへの帰還はまだまだ十分にあり得るのではないか。

 いずれにしても、オフシーズンはまだ数カ月を残しており、結論を急ぐ時期ではない。特に近年はFA選手との契約は遅れる傾向にある。ヤンキースとの再契約にしても、移籍にしても、田中の去就決定までにはもうしばらく時間がかかりそうな気配だ。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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2020年12月17日のニュース