阪神球団社長辞任のなぜ? 背景には無言の圧力か トップの意向で強引な火消しと幕引き図った可能性

[ 2020年10月10日 05:30 ]

【プロ野球阪神】会見する揚塩健治球団社長=兵庫県西宮市の阪神球団事務所(代表撮影)
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 【記者の目】「なぜ?このタイミング」だったのか。優勝は絶望的でも、揚塩社長が直接交渉で就任させた矢野監督ら現場は勝利を願うファンのために最後まで戦い抜く決意を貫いていた。その中での辞任劇。タッグを組む指揮官が直接伝えられたのは会見前の午後になってからだった。

 挙げた理由は、<1>混乱の収拾<2>選手への理解を要求の2点。表向きは一連のコロナ騒動や過去の事案について全責任を取るためだった。「着任以来、いろいろな混乱を招いた」とコロナ以外も理由にあったことを強調しても、決定打となったことは事実だろう。

 コロナ禍で球団が置かれた現状に「辞任」という形で火消しと幕引きを図ったと捉えることが妥当だ。ただし、球団トップの辞任だけが解決策ではない。実際、今回のコロナ騒動に関しても解決した事柄はまだない。球団内の聞き取り作業や調査は途中。正確な感染経路も特定には至っていないのが現状だ。残る2カ月弱の任期中に原因究明や再発防止案などの陣頭指揮を執るとは考えにくく、来季への準備など課題は山積している。

 では、なぜ辞任の決断を下したのか。無言の圧力が背景にあったとみていい。球団を傘下とするグループ最高責任者である阪急阪神HDの角和夫会長が一部夕刊紙などの取材で「(球団幹部の)ケジメは必要」とメッセージを発信。“内部事情”が公となったことで当事者たちは進退を迫られていたのだろう。事実上の「解任」宣告が「辞任」の決断を早めたと思われる。

 影響力と発言力のあるトップの意向で一気に動きだした強引な幕引き劇には多くの「?」が残る。「withコロナ」の時代。プロスポーツ界を代表する伝統球団、そして、集団感染を経験した組織としての使命は違う形もあったはずだ。
(阪神担当キャップ・山本 浩之)

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2020年10月10日のニュース