世のリーダーたちは見習うべき ピンチをチャンスに変えるロッテ・井口監督の懐の深さ

[ 2020年10月10日 14:30 ]

ベンチでガッツポーズするロッテ・井口監督(撮影・高橋茂夫)
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 懐が深く、何ごとにも動じない。そんなリーダーがいると、心強くなる。ロッテの井口資仁監督を見ていて、つくづくそう思う。ソフトバンクとの首位攻防戦前に起きた新型コロナウイルスの大量感染。しかも荻野、角中、藤岡、菅野、清田、鳥谷ら主力級やベテランに相次いだ。計22人の大量入れ替え。戦力ダウンを余儀なくされても井口監督は慌てない。「若手にはチャンス。優勝争いの中、試合に出られるのはいい経験になる」。苦しさは一切口にせず、前向きな言葉で鼓舞した。

 集団感染から最初の試合となった6日のオリックス戦は完敗した。井口監督は翌日の試合で同じく昇格組の藤原を1番に抜てき。高卒2年目の20歳も犠打や今季初安打で勝利に貢献した。迎えた9日の首位攻防初戦ではプロ初の3安打を放ち、ゲーム差なしに迫る勝利の立役者となった。

 「大事な試合だったので、勝つことだけを意識した」。この言葉から相当な集中力がうかがえる。首位決戦でも緊張するどころか「やってやる」という気概。そのたくましさは、大阪桐蔭時代に甲子園で計3度も優勝したことがあるからだろう。井口監督はこの経験を買ったわけだ。

 藤原の抜てきだけではない。高卒3年目、21歳の安田を4番で使い続けていることも、懐の深さを感じる。打率は、・230(9日現在)。まだまだ安定した成績は残せていなくても、「4番として育てる」という強い意志を感じる。昔で言えば、巨人の松井秀喜。最近で言えば、ヤクルトの村上宗隆。結果を残してから不動の4番に定着したが、安田は言うなれば、「育成型の4番」である。

 井口監督の懐の深さを最初に感じたのは、メジャーからロッテに移籍した09年。去就が騒がれた1月に自主トレ先の沖縄で取材した。約束もなしに宿泊先に出向いた。ほぼ面識もなかった。門前払いも覚悟していたが、「わざわざ、どうも」と招き入れてくれて、なぜかバーベキューまで参加させてもらった。「ロッテ移籍決定的と書く」と伝えても全く動じず、肉を食べさせてもらった思い出がある。おいしかった。

 勝負強い打者だった。それを支えたのはボールを十分に引きつけ、逆方向に強い打球を打ち返す技術。「懐の深い打撃」とよく書いたが、監督としても同じだった。(記者コラム・飯塚 荒太) 

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2020年10月10日のニュース