悩める各地方高野連 代替大会開催へ背負う重い責任 プロの動向が今後の指針に

[ 2020年5月25日 10:00 ]

千葉県高野連臨時理事会で独自大会開催を決め、会見する渡辺範夫会長
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 夏の甲子園の中止が決まり、3年生の花道を飾るべく各県高野連や指導者が代替大会や試合の実施に動き始めている。

 すでに沖縄や千葉、秋田などが代替大会の開催を発表。指導者でも龍谷大平安(京都)の原田英彦監督は緊急事態宣言の解除を前提に甲子園常連校との練習試合を組み、真剣勝負の場を設けたい考えを表明。県岐阜商の鍛治舎巧監督は県大会で終わらずに東海大会の開催を提案するなど強豪校やベテランの監督が続々と私案を明かしている。

 一方、独自開催を一任された各地方高野連は重い責任を負うことになった。「3年生の最後を飾りたい」という思いと「人命」の板挟みになっている。高野連幹部は「特効薬がない以上、絶対に感染しないという保証ができない。どうやったら安全を担保できるのか」と苦悩を明かした。当然、命の安全が最優先となる。新型コロナウイルスは依然として「死」につながる感染症。万全の対策を講じて3年生の最後の舞台を用意したとしても、万が一参加選手に感染者が出て、命を落とすことになれば誰が責任を負うのか。そこが大きな問題だ。

 さらに、県教委の学校再開や課外活動再開の指針が大きな壁となって立ちはだかっている。「課外活動の再開は通常授業再開から6週間後」と定められた県の高野連関係者は「仮に6月1日に授業再開となっても分散や時差登校から始まる。通常授業の再開はもっと先。そうなれば課外活動の再開は、早くても秋ごろということになる。夏の大会どころか秋の県大会すら開催できるかどうか。生徒のことを思えばなんとか開催してあげたいが断念も考えなければならない」と話す。

 世間の声にも過敏にならざるを得ない。各高校でも「短時間で練習するなど対策をしながら練習を実施していたが、学校に苦情が寄せられて断念せざるを得なくなった」という声を複数聞いた。周囲の目はまだまだ厳しいのが現実だ。また、真夏の開催を検討する県が多いが、十分に体ができていない選手は熱中症やケガの危険性が高まる。医師や看護師の球場常駐も医療体制がひっ迫する中では要請できない上、病院に負担をかけるような事態は避けたい。

 そんな中で、希望となりそうなのがプロ野球の再開だ。詳細なガイドラインを整え、6月の開幕を目指している。プロの動向は今後のアマチュア大会開催の指針となるだろう。

 現実をとらえ、安全な代替大会をどう開催するか。正念場を迎えている。(記者コラム・松井 いつき)

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