【内田雅也の追球】野球場の「インスタ映え」――甲子園球場前に現れた巨大バット

[ 2020年1月10日 07:45 ]

甲子園駅前に姿を見せたバットのオブジェ。後方は建設中の「チームショップ・アルプス」
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 阪神電車の甲子園駅前広場に大きなバットが姿を現した。現在工事中の囲いの合間から、大小2本のバットが交わり立っているのが見える。中ほどに「HANSHIN KOSHIEN STADIUM」とある。

 このオブジェは今月6日に工場から運ばれ、工事中の「チームショップ・アルプス」の前に設置された。コールテン鋼製で高さは6メートル35もある。なかなか目立つデザインである。

 「インスタ映えを考慮しました」と甲子園球場長・城島和弘は話した。「このバットの所で皆さんに写真を撮ってもらったり、待ち合わせ場所に使ってもらえれば」。ボールやグラブも案としてあがったが、「遠目からでも目立つように」とバットで落ち着いた。

 甲子園駅を降りた際、阪神高速神戸線と国道43号線の高架にさえぎられて、甲子園球場が目に入らない。以前から指摘されていた難点である。

 今回、駅周辺の工事ではバットのオブジェに加え、門構えのようなゲートも設けた。「駅からも見え、来場者をお出迎えする形になれば」(城島)という思いを込めた。

 戦前、甲子園駅の前には阪神電鉄初代社長・外山脩造像があった。すぐ近くに住んでいた作家・佐藤愛子が『愛子』(角川文庫)で書いている。

 <停車場前の広場に立っている銅像は袴(はかま)をはいた背の高いおじいさんだった。右手に扇子を持って、高い台座の上でプラットホームの方を睨(にら)んでいる。銅像のまわりの石段は、いつも太陽の光を吸って暖まっているが、長い間そこに腰をかけていると、夕方になるにつれて、お尻の下が冷たくなっていく。わたしはその広場がすきだった>。駅前、球場前の名所だった。銅像は戦中、金属類回収令で供出された。

 8日午後、阪神球団社長・揚塩健治、球団本部長・谷本修ら球団首脳と城島ら7人が新年あいさつで、大阪・梅田のスポニチ大阪本社にやって来た。代表・山本泰博、編集局長・中根俊朗らと懇談するうち、話題がオブジェに及んだ。

 「バットは2本で立つのか!?」という冷やかしはともかく、誰かが言った。「ビリケンさんみたいに、触れば御利益があるとか、バットの間をくぐったら勝ったとか……。そんな風に、ファンの皆さんに親しまれる場所になればいいね」

 その通りだろう。野球場を訪れる人びとは野球の試合だけでなく、思い出や記憶に残るシーンを求めている。今で言うインスタ映えのスポットも大切な要素だ。巨大バットが甲子園の新名所になれば――と願っている。=敬称略=(編集委員)

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