阪神ドラ1近本(5) うまくなりたい一心でつかんだ「チャンス」

[ 2018年11月15日 09:00 ]

ドラ1近本光司外野手(24=大阪ガス)(5)

7月の都市対抗野球では最優秀選手賞と首位打者のタイトルに輝いた近本
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 【ドラフト指名選手 矢野阪神の1期生】17年4月に大阪ガスに入社した近本は1年目の夏を迎えるころになると「僕はチャンスが好きなんです」という言葉を口にするようになった。「チャンス」とは大舞台を指す。小学生時代に野球を始めて以降、一度も全国大会に出場したこともなかっただけに、周囲は「?」だったが、決してビッグマウスではなかった。

 同年の都市対抗予選でチームは本大会出場を逃す中、2試合連続本塁打を放つなどアピールし、三菱重工神戸・高砂の補強選手として出場。初戦のNTT東日本戦で「2番・中堅」で全国デビューを果たすと初回の中前打を皮切りに3安打を放った。自チームで出場を果たした今夏の都市対抗では5番打者として躍動。準決勝のJR東日本戦では同点の8回に右翼席へ勝ち越しソロを放つなど勝負強さも発揮した。決勝の三菱重工神戸・高砂戦でもリードを広げる中前適時打を放ち優勝に貢献。5試合で21打数11安打の打率・524、1本塁打、5打点。4盗塁を決めるなど自慢の脚力も見せつけ、橋戸賞(最優秀選手賞)と首位打者のタイトルを手にした。

 プロへの扉を開くことになった大阪ガス入りのきっかけは関学大3年春のリーグ戦だった。当時の同社野球部監督だった竹村誠氏(現同副部長)が視察した際に「スピード感がすごかった。カルチャーショックだった」と野手転向から間もない近本の動きに衝撃を受けた。「伸びるだろうなという予感がした。脚力、人間性、すべてでうまくなりたいという意思表示が伝わってきた」。真摯(し)に野球に取り組む姿勢も見続け、第一印象から評価が変わることはなかった。

 「治療とかでも積極的に電気治療させてくれとか酸素カプセルを貸してくれとか自分でお金を払って治療しようとしていた。(大学から自宅に)帰る途中も六甲のほうで途中下車してウエートトレーニングをしているとか。ケガしたときは逃げがちなんだけど、そういう姿を見て、野球が好きなんだなと」

 入社後は「足の速さを生かすため」(竹村氏)に打撃力アップに取り組んだ。4年秋のリーグ戦では2本塁打するなど長打力も見せ始めていたが「軸回転でしっかり打てるように。しっかりスイングすれば引っ張れる」と力強いスイングを追い求めた。打球を速くすることで守備側も前に守ることができなくなり、その結果、内野安打も増える――という狙いもあった。

 「夏秋連覇」を狙った11月の日本選手権では初戦の鷺宮製作所戦で3安打したが続くHonda鈴鹿戦で敗退。バント安打に二盗と存在感は示したが、タイブレークに入り、2点を追う延長12回1死一、二塁では左飛に終わった。矢野監督が「2番・中堅構想」を抱くなど即戦力として期待は高い。つかんだ自信とさらなる飛躍への課題を持って、プロの世界に飛び込む。(長谷川 凡記)=終わり=

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