プレーする喜び胸に…昨年準Vの気仙沼向洋 再出発1勝

[ 2011年7月11日 06:00 ]

<気仙沼向洋・黒川>逆転に沸く気仙沼向洋ベンチ

宮城大会1回戦 気仙沼向洋5―2黒川

(7月10日 東北福祉大)
 第93回全国高校野球選手権大会(8月6日から15日間、甲子園)の地方大会は10日、神奈川大会が開幕するなど29大会で336試合が行われた。宮城大会では東日本大震災で壊滅的な被害を受けた昨夏の準優勝校・気仙沼向洋が黒川を6―2で下し、復活への第一歩をしるした。また、山梨大会では今秋ドラフト1位候補で、高校通算70本塁打の高橋周平内野手(3年)を擁する東海大甲府が3回戦に駒を進めた。11日は22大会で216試合が行われる。

 大粒の汗が流れ、目には涙が光る。こんな瞬間を待っていた。全てを乗り越えてつかんだ夏の勝利。気仙沼向洋ナインが整列すると、応援団は涙で拍手を送った。「いろんな思いが伝わってきて…大きな1勝だと思います」。川村桂史監督は感慨深げだ。

 3月11日。巨大津波に学校もグラウンドも野球用具も奪われた。練習中だったナインは川村監督の指示で5キロ先にある寺まで走った。学校に残った川村監督は校舎の屋上に避難。4階まで達した津波に一瞬、死を覚悟するほどだった。「生きててよかった。命をもらいました」。三浦主将の言葉は全員の本音だ。

 練習が再開できたのは4月22日。学校は壊滅状態のため、近隣の本吉響高のグラウンドを借りて時間差で練習。流された野球用具は支援物資に助けられた。練習不足は明らかだったが、昨夏宮城大会決勝で仙台育英に大敗した借りを返そうと個々に工夫。だから苦境にも慌てなかった。1点を追う5回1死一、二塁から三浦主将が三塁前へ絶妙のバント安打。佐藤雅の押し出し四球で追いつき、敵失と那須の右翼線三塁打で一挙5点を奪った。「いろんな経験をしてたくましくなった」。川村監督は諦めず、つないで勝ったナインを褒めた。

 右肘痛を押して6回2失点と力投したエース斉藤の父・仁さん(62)は言う。「みんな津波から逃げたんじゃない。津波に勝ってきたんだ」。スタンドには「航跡、永久に」ののぼりが揺れる。気仙沼向洋の今夏の航跡はまだ続いていく。

 ≪昨夏宮城大会の気仙沼向洋快進撃VTR≫7月11日の1回戦で先発の吉田が古川学園相手に1―0完封。勢いに乗ると2、3、4回戦を勝ち上がり、準々決勝の仙台東戦は2―1で9回サヨナラ勝ち。準決勝は小山宜の本塁打などで強豪・東北に6―5で競り勝って初の決勝に進出。しかし決勝戦は仙台育英に1―28と記録的な大敗を喫した。

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2011年7月11日のニュース