オリ・能見 最後まで美しかったワインドアップ 万感の引退登板、オール直球勝負でK斬り

[ 2022年10月1日 04:45 ]

パ・リーグ   オリックス4―3ロッテ ( 2022年9月30日    京セラD )

オリックス・能見
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 美しいまま終わった。引退登板に臨んだオリックス・能見は、代名詞とも言えるワインドアップで腕を振った。オリックス移籍後は“封印”していたフォーム。オール直球勝負で最後は4球目の145キロで安田を空振り三振に斬った。

 「(ワインドアップの)練習はしていたけどイマイチ…。真っすぐを投げたけど最後だけ指にかからなくて。キレはない(笑い)。垂れた真っすぐで複雑」

 自己採点は厳しかったが、1死を奪い今季初めてマウンドに向かった中嶋監督にボールを渡した。ずっとそうだったように、最後まで表情は崩さない。あるべき姿、能見篤史というピッチャーのポリシーを貫き通した。

 「本当に感謝です」

 試合前、家族のいるネット裏に足を運んだ。長男、次男、長女が身体に触れ、お父さんの最後のユニホーム姿を名残惜しそうに見つめた。プロ入り以来、子どもたちの誕生日に近い日に手にしたウイニングボールをプレゼントするのが流儀。この夜は、渾身(こんしん)のストレート4球を贈った。

 阪神・藤浪が「あんなに走れる40歳は見たことないです。アスリートとしてあるべき姿を見せてもらいました」と尊敬するように、キャリアを積み重ねても不変だったのが走る量。「シーズン中は苦しいことの方が多くなる。あえて苦しいことに向き合ってやってる」。“軽快”に見えても、自身にムチを打って戦ってきた。

 「たくさん声援をいただいて。阪神のユニホームも掲げていただいてありがたい」

 涙はなくても、笑顔はあった。「やり切った」という野球人生。18年間の疾走が幕を閉じた。(遠藤 礼)

 《中嶋監督大胆采配ズバリ!8回投入》息詰まる展開となった同点の8回に中嶋監督が動いた。序盤の段階で早くも2安打していた4番の安田に対して能見を投入。大ベテランを2番手として大胆起用した。「どこで送り出すのかとか、そればかり考えていた」。三振で1死を取ったところで交代を告げると、指揮官自らマウンドに足を運んで慰労。試合後のセレモニーで43歳左腕から「中嶋監督と2年間やれて一つも悔いはありません」とスピーチされると、「言い過ぎちゃう、あれ。そんなに持ち上げなくてもええやろ」とうれしそうだった。

 ◇能見 篤史(のうみ・あつし)1979年(昭54)5月28日生まれ、兵庫県出身の43歳。鳥取城北から大阪ガスに進み、04年ドラフト自由獲得枠で阪神入団。09年は先発に定着して13勝。12年に172奪三振で初タイトル。13年WBC日本代表。20年オフにオリックスへ移籍。阪神では通算443試合で104勝93敗2セーブ51ホールド、防御率3.34。オリックスでは投手コーチ兼任。1メートル80、74キロ。左投げ左打ち。

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