能見さんの優しさに救われた 阪神構想外の夜…記事にすると伝えた記者に「書かなあかんのやろ?オッケー」

[ 2022年10月1日 07:00 ]

パ・リーグ   オリックス4―3ロッテ ( 2022年9月30日    京セラD )

オリックス・能見
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 【記者フリートーク】20年10月22日付の朝刊で能見さんが来季の構想外となり、タイガースを退団することを報じた。情報をつかんだのは前日のナイター終了後。原稿の締め切りまで1時間を切っていたが、やっておかなければいけないことがあった。パソコンを起動する前に、ほとんどかけたことのなかった「能見篤史」の電話を鳴らした。出てくれないと覚悟もしたが「何?どうした?」と聞き慣れた声が返ってきた。

 記事にすることを伝えた。否定はもちろん、一喝されること…すべて悪い反応を想像していたが「お前も記者として書かなあかんのやろ?それは仕方ない。オッケー」と了承してくれた。その後、自分の声が震えたのは「緊張」のためではなかった。初めて名刺を渡したのはもう12年前。現場では「お前の取材は浅い」と、ずっとダメ出しを食らっていたから、能見さんの優しさが余計に染みた。

 その3週間後、タイガースでの最終登板に合わせて掲載した独占手記の取材は忘れられない。家族、ボールを受けてくれた捕手、同僚、甲子園のファン…関わってくれた人たちへの感謝の言葉がこれでもかと溢れた。マウンドでは感情を出さない“鉄仮面”でも、その裏には人間味に満ちた熱いものがある。

 オリックス移籍後「いつでも取材しに来いよ」とタイガース時代からは想像もつかない言葉をかけてくれた。京セラドームの記者席から目に焼き付けた“最後のワインドアップ”。能見さん、ありがとうございました。(阪神担当・遠藤 礼)

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2022年10月1日のニュース