トレンド入りに一時接続不可…関東学生連合の育英大・新田颯 1区で3位相当の“大逃げ”「楽しかった」 

[ 2023年1月3日 05:06 ]

第99回東京箱根間往復大学駅伝 往路 ( 2023年1月2日    東京・大手町~神奈川・箱根町 5区間107・5キロ )

2区の麗沢大・工藤(右)にたすきをつなぐ関東学生連合の1区で育英大・新田(撮影・木村 揚輔)
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 箱根駅伝出場を逃した大学の選手で編成される関東学生連合の新田颯(21=育英大)が1区(21・3キロ)を沸かせた。スタート直後から飛び出す“大逃げ”を敢行し、一時は後続に1分以上の差をつけて独走。残り1キロから2人に抜かれ3番手タイムの1時間2分59秒(オープン参加のため参考記録)だったものの、見せ場をつくった快走にツイッターでは関連ワードがトレンド入りした。

 「学生連合」「育英大学」「新田選手」――。箱根路では見慣れない黄色いユニホームの独走に、ツイッターでは続々と関連ワードがトレンド入りした。ネットでは「育英大」が検索され、同大の公式サイトはアクセス集中で一時は接続できない状態に。「楽しかった。知らない方にも声をかけてもらって力になった」。新田は爽やかに笑い、「育英大を宣伝してやろうと走った」と付け加えた。

 (1)スローペースでラスト勝負(2)ハイペースで削り合い(3)独走、の3パターンを想定していたが、「1キロ通過時点で後ろがついてこなかったので、行っちゃおう」と(3)を選択。けん制し合う集団を尻目に5キロを14分24秒で通過し、15キロ地点では1分以上の差をつけた。残り3キロから左脚がつり始めて20・3キロで明大、最後は駒大にも抜かれ“幻の区間賞”は逃したが、「脚が限界に来ていたので仕方がない」と苦笑した。

 ハンドボール部にいた中1の夏、体力づくりで長距離走を始め、朝練に招かれて陸上を始めた。高校は女子の強豪・千原台(熊本)。自身は無名で大学からの勧誘は2校だけ。高校の恩師の縁で「イチからつくるのも面白い」と長距離が強化指定部となった育英大に進んだ。ジョギングやアップダウン走から始めて練習の質を徐々に高め、1万メートルのタイムは入学当初から4分半も短縮。2年時には出番がなかった関東学生連合で主将に選ばれた今季、「集団で走るのは得意」と1区走者に立候補した。

 箱根デビューは陸上人生の集大成でもあった。「大学でしっかり走って、悔いのないようにしてやめようと思っていた」。卒業後は群馬トヨタに就職し、営業をしながら育英大や職場の市民ランナーを指導する。「無名でも箱根駅伝を走れるよと伝えたかった。雲の上の存在だったのが、練習を積み重ねるうちに目の前に来て、実際に走ることができた」。すがすがしい笑みを浮かべ「来年の100回大会に出てほしいが、5年以内には」と後輩に育英大の本戦出場を託した。

 ◇新田 颯(にった・はやて)2001年(平13)1月31日生まれ、熊本県山鹿市出身の21歳。千原台高では男子3000メートル障害でインターハイ出場も予選落ち。19年に育英大教育学部に入学。自己ベストは5000メートルが13分53秒23、1万メートルが28分07秒32。尊敬するアスリートは04年アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治スポーツ庁長官。

 ▽育英大学 前橋育英高などを運営する群馬育英学園が18年4月、高崎市に開校した4年生私立大学。教育学部教育学科に児童教育専攻とスポーツ教育専攻がある。陸上部は19年度に強化指定部となり、日体大時代に第65回箱根駅伝の5区で区間賞を獲得した島津秀一氏が駅伝監督。96回大会で関東学生連合に選ばれた外山結が5区で初の箱根ランナーとなった。今年の予選会は23位で本戦出場を逃し、個人では新田が最上位の33位だった。

 ▽関東学生連合 03年の79回大会から選抜チームが編成され、15年から現在のチーム名となった。今大会は予選会で落選したチームから1人ずつ、本戦出場経験のない16人を選出。07~13年までは正式参加が認められ、青学大の原晋監督が率いた08年には最高位の総合4位に入った。選手では04年に関東以外にも門戸を広げた日本学連選抜として出た鐘ケ江幸治(筑波大)が5区区間賞で最優秀選手賞を獲得。17年に照井明人(東京国際大)は区間賞に相当するタイムで走ったが、規定により現在と同じオープン参加の参考記録扱いで“幻の区間賞”となった。来年の100回大会は全国の大学が予選会参加可能となり、関東学生連合チームは結成されない。

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2023年1月3日のニュース