羽生結弦の4回転半 4・11点から完成形へ

[ 2021年12月28日 16:30 ]

21年全日本選手権の男子フリーを舞う羽生結弦(撮影・小海途 良幹)
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 12月26日、午後3時過ぎ。さいたまスーパーアリーナにいた大和弘明から連絡があった。

 同日夕方に始まる、フィギュアスケート全日本選手権の男子フリー。各選手が跳ぶジャンプなどが記載されている、予定構成表が会場で配られた直後だった。

 羽生結弦(ANA)の欄には興奮と緊張を呼ぶ、数字とアルファベットの組み合わせが記されていた。
 
 「4A」

 クワッドアクセル(4回転半)。羽生が追い続ける夢のジャンプ。午後9時20分頃、実戦初投入した「天と地と」が終わると、都内某所で作業していた私は、ジャッジスコアが日本スケート連盟のホームページにアップされるのを待った。クリックして表示されたスコアシートには、こうあった。

 「4A<<」

 演技を始めてから18秒後。果敢なアタックは、両足着氷だった。

 昨季、羽生が「天と地と」で冒頭に跳んでいた4回転ループの基礎点は10・5点。現在、成功例があるジャンプで最も高いのは4回転ルッツの11・5点。4回転半は17―18年シーズンまでは15・0点だったが、ルール改正で各ジャンプの基礎点が下がった結果、最も下げ幅が大きく、12・5点となった。

 ハイリスクでローリターンな現状は、スコアに如実に表れた。羽生の「4A<<」は、回転不足(ダウングレード)の判定で基礎点が3回転半の8・0点に。そこから出来栄え(GOE)で3・89点の減点があり、このジャンプで得られた点数は「4・11点」だった。

 4・11点は、GOEで加点がつくクリーンな2回転半(ダブルアクセル、基礎点3・3点)よりも低い。

 4回転半で得点を稼げなかったにもかかわらず、他を完璧にまとめあげた羽生のフリーは211・05点。国際連盟(ISU)公認スコアでないため、単純比較はできないが、今季世界最高得点を上回った。

 「右足関節靱帯損傷」で11月のグランプリ(GP)シリーズ、NHK杯とロシア杯を欠場。約8カ月ぶりの復帰戦となった全日本で、新ショートプログラム(SP)の「序奏とロンド・カプリチオーソ」も完璧に演じた。SPも合計も“今季世界最高”。2年連続6度目の優勝を飾り、22年北京五輪の代表に決まった。

 「五輪って、やっぱり発表会じゃないんですよ。勝たなきゃいけない場所なんですよ。僕にとっては」

 14年ソチ、18年平昌と連覇している羽生は、22年北京での3連覇を明確に意識している。そして、そのために必要なものも。

 「4回転半をしっかりGOEプラスでつけられる構成にしたい。こっから1カ月ちょっとしかない状況の中で、やれることはたぶん、アクセルぐらいだと思ってるので」

 練習では回転が足りる寸前までは到達しているが、まだ回りきってのクリーンな着氷はないという。羽生だけが歩む、いばらの道。どれだけ心身が傷ついても、挑戦をやめられない理由がある。

 「みんなの夢だから、みなさんが僕に懸けてくれている夢だから。自分のためにも、もちろんあるんですけど、みなさんのためにも、かなえてあげたい」

 4回転半と「天と地と」。羽生が背負う思いはきっと、夢の舞台で実を結ぶ。

(杉本 亮輔)

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