吉田、無敵の“完全V”!史上2人目の3連覇

[ 2010年11月27日 06:00 ]

決勝で相手を投げ飛ばしてポイントを得た吉田(上)

 【広州アジア大会】レスリング女子55キロ級の吉田沙保里(28=綜合警備保障)が3連覇を達成し、今大会不振の女子レスリングで唯一の金メダルを獲得した。決勝では世界選手権59キロ級2位の張蘭(20=中国)を2―0で下し、1回戦から4試合すべて相手に1ポイントも与えずに完勝。3連覇は競泳100メートル背泳ぎの田中聡子(58、62、66年大会)以来、日本女子史上2人目となった。

 日本の悪いムードも吉田には関係なかった。前日の48キロ級で世界王者の坂本が銅メダルに終わり、63キロ級の西牧と72キロ級の浜口が準決勝までに敗れ、日本勢でただ1人残った決勝。相手は初対戦の59キロ級世界2位の中国の若手で、「加油」(チャーヨー=頑張れ)の大合唱が響く逆境の中でも、しっかり実力を発揮した。
 第1ピリオドから積極的に攻めた。得意の片足タックルを仕掛けて着実に加点して5―0。第2ラウンドは終盤に小手投げで場外に出して1―0。9月の世界選手権に続いて、全試合無失点で完勝し「上の階級の選手で警戒するところもあったけど、思いきってできた。ホッとしています」と笑顔を見せた。
 アジア大会といえども、五輪王者として全力で勝ちにいった。親交のある大相撲の横綱・白鵬の連勝が途切れた際には「ちょっとした油断やスキがあれば、当たって砕けろと向かってくる相手にやられる」と教訓にした。前日に敗れた中京女子大の先輩・坂本には「五輪やアジア大会で勝つことは大変なこと。沙保里は凄い」と言われ「うれしかったし、頑張ろうと思った」と力に変えた。
 3連覇は日本女子2人目。「うれしい。ロンドンにつながる」と日本女子史上初の五輪3連覇へ向けて手応えを口にした。だが、喜んでばかりもいられない。前回大会で3つの金メダルを獲得した女子レスリング王国は、吉田が負ければ金メダルなしだった。危機を救った日本のエースは「このままでは日本は低迷する。自分も周りも、しっかり練習しないといけない」とあらためて気を引き締めた。

 ≪低迷に激怒の会長、自ら技術指導≫レスリングの日本女子は金メダル1個に終わり、日本レスリング協会の福田富昭会長(68)は激怒。「今まで常勝ムードだったが、初めての危機を迎えた」とそのまま試合会場で居残り練習を命じた。同会長は吉田以外の3選手の敗因として「日本の生命線であるタックルにきっちりと入れていない」と説明。自らスーツの上着を脱いでマットに上がり、選手らに技術指導した。

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2010年11月27日のニュース