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震災から10年…思いつなぐ黒メバル―カレイリレー

[ 2021年3月11日 09:14 ]

佐藤隆さんは丸々と太った黒メバルをゲット
Photo By スポニチ

 【菅野順也の釣り巡礼】東日本大震災から10年の月日が流れた。津波によって甚大な被害があった宮城県閖上地区。永勝丸に乗り込んだ釣り人たちはあの日に思いをはせながら、仙台湾で旬の黒メバルとカレイを狙った。(福島市在住、スポニチAPC・菅野順也)

 震災当時の面影を感じないほどにすっかり様変わりした閖上地区。堤防や道路が整備され、釣り船にも乗船客が戻っている。

 「きょうは朝イチに食いが立つ黒メバルを狙って、後半にカレイ釣りにリレーします。黒メバルはシーズン半ばを過ぎましたが、カレイはこれからハイシーズンですね」と、いつもの笑顔で遠藤学船長が迎えてくれた。

 震災当時は兄の栄喜さんがかじを握っていたが、2年後に弟の学さんが船長となり復帰を果たした永勝丸。栄喜さんは妻と愛息を、兄弟は母を津波で亡くした。

 午前6時15分、水深37メートルの漁礁のポイントに到着。胴突サビキ仕掛けを投入すると「ブルブル」と竿が躍り、3点、4点と多点掛けで黒メバルが浮上した。

 仙台市・峯岸誠一郎さん(69)は「自分で船を所有していましたが、津波で流されてしまいました。再び船を持つのは諦めましたが、現在は遊漁船で楽しんでいます」。宮城郡・佐藤隆さん(63=会社員)は「震災の時は会社の建物が壊れて2カ月間仕事ができませんでした。ガソリンがなくて苦労した思い出もあります。3年間は釣りをする気になりませんでしたが、今では月イチのペースです」と良型を釣り上げた。

 午前9時半、次のターゲットを狙って船は10分の移動で砂地へ。小型片天ビン仕掛けに餌は青イソメ。オモリで海底を小突いて寄せるスタイルで、マガレイ、マコガレイ、イシガレイの小気味良い魚信が伝わった。

 富谷市・八巻正実さん(64=会社員)は「震災後3年間、休みましたが、再びカレイとヒラメがたくさんいるこの海で釣りができてうれしかったです」と、良型のマコガレイを釣り上げた。

 震災から2カ月後、私はスポニチスタッフとともに宮城県と福島県の東北地区東日本釣宿連合会所属の釣り宿を巡回して被害を目の当たりにした。あの時からは復興を果たしたが、課題も山積み。さらなる復興と、この豊かな海がいつまでも平穏なことを願いたい。

 ◯…宮城郡・佐藤貴生さん(44=会社員)は「震災当時は子供が生まれて1カ月。オムツも買えない状態でとても不安でした。10歳になった息子と今度は一緒に乗船したいです」と、46センチのイシガレイに目を細めていた。

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