【コラム】金子達仁

Jにも「ダム!」と毒づけるチームを

[ 2020年9月26日 06:00 ]

 ミュージカルも映画も見たことはない。わたしにとって「ダム・ヤンキース」といえば、90年代のハードロック・バンドである。

 元ナイト・レンジャーのジャック・ブレイズと元スティックスのトミー・ショウが手を組んだスーパーバンドで、全米3位になった「ハイ・イナフ」は、うっとりするほど美しいバラードだった…なんて話がしたいのではない。問題は、有名なミュージカルからとられたとされるバンド名である。

 くたばれ!ヤンキース。

 リアルタイムで聞いていたときは何とも思わなかったが、これ、相当にどうかしている。

 ただ、裏を返せば、それぐらい昔のヤンキースは強かったということ。調べてみると、ミュージカルが作られた50年代、彼らは49年からの5連覇を含めて6回、ワールドシリーズを制している。40年代を合わせれば20年で10回世界一。なるほど、これならば「ダム!」と毒づきたくなる人の気持ちもわかる。

 日本におけるヤンキース的存在といえば、はいはい、巨人ですね。振り返ってみれば、わたしは阪神を応援するのと同じぐらい、巨人に対して毒を吐いてきた。遺憾ながら、巨人のおかげでプロ野球の楽しみが増していたのも事実。

 さて、Jリーグにおけるヤンキースは、巨人はどこだろう。

 これがドイツであれば、バイエルンが憎まれまくっているし、スペインであればバルサ、レアルの2強が強烈なアンチを有している。では、Jリーグは?

 先週末、ちょっぴり衝撃的な出来事があった。浦和がホームで0―3の惨敗。にもかかわらず、それがニュースにならなかった。わたしの見た限り、ほとんどのメディアは「浦和の敗戦」ではなく「川崎Fの勝利」という目線で試合を伝えていた。

 この節はもう一つショックなことがあって、それは1―2で神戸が名古屋に敗れたこと。メディアの論調では、これまた、神戸の敗戦が何の驚きでもなくなってしまっていた。揚げ句、フィンク監督突然の辞任…。

 ローマは一日にしてならず。うんざりするほど勝利を積み重ねて、積み重ねまくって、ようやく辿(たど)り着くのが巨人的な立場。負けが驚きではなくなってしまった浦和は、神戸は、また振り出しからのロード・トゥ・ヤンキースである。目指す気があるのであれば。

 いま、日本のサッカー界で敗北がニュースになる唯一の存在は川崎F。この成績と内容があと5年続けば、他チームのファンが、愛するチームの次に勝敗を気にする存在になれる。阪神ファンにとって、巨人の負けは何よりの良薬なのだ。

 ただ、日本に限らず、今後のサッカー界では、大きな地殻変動が起きるのではないか。メガ・クラブといえども、収入の大きな柱は入場料。そこが壊滅状態になっている以上、やりくりに行き詰まるところが必ず出てくる。そして、それは巨大なスタジアムを持つチームほど逃れがたい。

 欧州ほどに立場が固定されていないJリーグの場合、ここで有望な資金源を持ったチームは、一気の下克上もある。何にせよ、早く「ダム!」と毒づけるJのチームがほしい今日この頃。(金子達仁氏=スポーツライター)

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