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【コラム】金子達仁

気になる日本の敵陣での保持率

[ 2023年4月14日 11:00 ]

J1平均支配率(2023年シーズン第7節終了時点)
Photo By スポニチ

 4月12日本紙「水曜Jトピ」が興味深い特集をやっていた。

 「支配率の低いチームが上位に――昨年W杯の日本ばり!?逆転現象」

 タイトルから内容は想像していただけるだろうが、ここまでのJ1で上位につけている神戸や名古屋のボール支配率が低く、逆に支配率1位の川崎F、横浜FCが低迷しているという記事だった。記事にはなかったが、J2の首位を走る町田も、支配率では劣る試合が少なくない。

 ボールを保持する率をデータとしてはじき出し、試合の詳細を明らかにしようとする試みは、実は21世紀になって起きたこと。06年のW杯ドイツ大会あたりまでは、データを取ろうとする機運は見られなかった。サッカーをデータで解析しようとする発想自体が、圧倒的な少数派だった。

 私見で恐縮。流れを変えた要因は、おおまかにいって2つ。一つは、スポーツにデータを持ち込む米国式発想がサッカー界に流れ込んできたこと。もう一つは、異様なほどのボール保持率を誇るグアルディオラ率いるバルセロナという存在が出現し、その強さを説明する手段としてボール保持率が重用されるようになったこと。このチームの強さと異質さを説明する上で、シュート数やCKの数といった従来の数字は、あまり意味を持たなかったからだ。

 つまり、ボール保持率というデータは、結果はともかく、内容ではどちらが試合を支配していたかを明らかにするために用いられてきた。優(まさ)っていれば押していた、劣っていれば押されていたと考える習性が、少なくともわたしの中には根付いていた。

 ただ、保持率という概念には、大きな弱点もあった。自陣でボールを回す、相手からすれば何の危険もないプレーさえも、「相手を支配した」とカウントされてしまうからである。

 昨年、W杯での日本は、保持率でドイツとスペインに劣っていた。そして、ほとんどの時間、相手に試合を支配されてもいた。勝ったのは日本だったが、強かったのは相手だった、ということもできるデータだった。

 ところが、J1の上位を走る神戸や名古屋は、あるいはJ2首位の町田は、試合を相手に支配されているのか、耐えて耐えてのカウンターに活路を見いだしているのかといえば、それは違う。町田などは、試合が終わってからデータを見て「あれ?」と思うことが多い。肌感覚では五分五分以上の内容だったのに、保持率では劣っているのだ。

 バルサから始まったボール保持率にこだわるスタイルは世界中に広がったが、日本の場合、勝つための手段だった保持率が目的にすり変わってしまったところが多々あった。これは、欧州に比べて「前に行かない」ことに寛容な日本のファン気質も関係しているように思う。

 結果として、日本では国内リーグのみならず、代表でも「保持率は高いのにチャンスが少ない」という試合の比率が高めになってしまった。わたしは、依然としてボール保持率という概念は大切だと思っているが、日本の場合は、もう一歩進んでデータが必要なのでは、という気がしてきている。

 つまり敵陣での保持率。あるいはペナルティーエリアへの進入回数と進入時間。いかに相手を脅かしたか、という数字である。

 ということで、「水曜Jトピ」担当の矢吹大祐記者、一度このデータ、とってみてくれません?(笑い)。(金子達仁=スポーツライター)

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