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【コラム】金子達仁

満員の敵地で欧州勢とテストマッチを

[ 2023年4月4日 10:00 ]

スタジアムで盛り上がるファン
Photo By AP

 もう十分だ、という声も上がっていると聞いた。いまなお続くテレビのWBC狂騒曲。わからないではない。あれは、野球を、スポーツを超えて、日本史上に残る快挙だった。個人的には「もっともっとやって」な気分でさえある。

 ただ、昨年末のW杯と比べると、複雑な気持ちにもなる。というのも、昨年の盛り上がりは、こんなに長くは続かなかった。もちろん、ベスト16と世界一という結果の差も関係しているのだろうが、同じぐらいオトナの事情というか、権利関係が絡んでいる気もするのだ。

 W杯の際、局としては取り上げたいのだが、予算の関係で映像を使えない……という話をあちこちで聞いた。それに比べて、今回のWBCは、どの局のどのワイドショー、ニュース番組でも、惜しげもなく映像を使っているように感じられる。番組を作る側からすれば、映像ベースと静止画ベース、どちらが話を盛り上げやすいかはいうまでもない。

 WBCという大会のスタイルには疑問が残るし、今後修正していくべき点は多々あるとも思う。ただ、こと映像管理に関していうならば、特に試合中継以外の映像使用に関しては、FIFAよりもだいぶ進歩的に感じられた。どちらのやり方が人気の拡大により資するかは、これまた言うまでもあるまい。

 さて、日本がコロンビアに逆転負けを食らった数時間後、欧州選手権(ユーロ)予選を戦ったスペインはスコットランドに0―2で敗れた。同じ頃、ケルンにベルギーを迎えたドイツは、守備陣がズタズタに切り裂かれ、ホームで黒星を喫した。

 ……という書き方をすると、「おや?」と思われる方がいらっしゃるかもしれない。次回のユーロはドイツで開催される。つまり、予選は免除。グループAに同居するスコットランドとスペインが戦うのはわかるとして、なぜ、予選に参加しないドイツと、グループFのベルギーが戦うのか。理由は、今回のユーロの予選形式にある。

 10組に振り分けられたグループのうち、7つが奇数カ国によって構成されているのである。

 するとどうなるか。5カ国の総当たりならば、各節につき1カ国は傍観者とならざるをえず、予選全般を通じると2試合分、空白のカレンダーが生まれることになる。

 ベルギーは、その最初の空白を、ドイツとのテストマッチに充てたのだった。

 これは、日本にとっても大きなチャンスである。

 欧州の日程が過密化したことにより、ここ数年、テストマッチといえども欧州勢と組むのは難しい状況になりつつあった。スパーリングパートナーは、アメリカ大陸かアフリカ大陸のチームにならざるをえない。W杯本大会では必ず戦うことになる欧州勢と普段は手合わせができないという、あまり好ましくない状況が生まれていた。

 だが、今回のユーロでは、国際Aマッチデーのたびに、7カ国、予選のない国が出現する。スペインも、フランスも、オランダも、イングランドも、イタリアも、クロアチアも、所属しているのは奇数国のグループである。簡単なことではないだろうが、ぜひとも、満員の敵地で日本代表が戦う機会をつくっていただきたい。カタールでスペインとドイツに肘鉄を食らわせたいまならば、通らない話でもないと思うのだが。(金子達仁=スポーツライター)

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