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【コラム】金子達仁

久々の“キャッチするGK”岡山学芸館・平塚 今後に期待

[ 2023年1月14日 14:00 ]

<神村学園・岡山学芸館>PK戦に勝利し沸くGK・平塚(中央)ら岡山学芸館イレブン(撮影・白鳥 佳樹)
Photo By スポニチ

 昔の選手は凄かった、と年寄りは言う。だが、サッカーは常に進化している。かつての天才が、現代サッカーでも通用するとは限らない。そう信じていたわたしは、ゆえに、ペレを軽視していた。所詮(しょせん)はクライフ以前の王様。74年のW杯では、後継者たるリベリーノがオランダのトータルフットボールに完封された。ペレがいても、きっと結果は同じ。いわば旧世代の伝説。マラドーナにかなうわけがない。ずっと、そう思っていた。

 考えが覆ったのは、社会人になってからだった。親しくさせてもらっていたベテランのカメラマン氏に言われた。

 「ま、ペレ対マズルケビッチを見てなけりゃ、そう思うのも無理はないわな」

 マズルケビッチ?誰?聞けば、70年大会に出場したウルグアイのGKだという。この選手をかわしたペレのプレーが、とてつもなく天才的なのだという。

 まだYouTubeなどなかった時代である。わたしはありとあらゆるツテを使って70年大会の映像をかき集め、そして……度肝を抜かれた。

 なるほど、凄い。ある意味、マラドーナの5人抜きより衝撃的(特に結末が)。ペレに対する思いは、激変した。

 ありがたいことに、いまではYouTubeで「ペレ、マズルケビッチ」と入力するだけで、伝説のプレーを見ることができる。ご興味のある方は、ぜひ。

 さて、前日もいつものようにYouTubeを眺めていると、「本田圭佑が無回転FKをしなくなった理由」という動画が目に留まった。本人曰(いわ)く「足に凄く負担がかかる」というのが、その理由だという。

 足に負担がかかる、というのはそうかもしれない。普通のキックの動作が、腰を支点にした、漢字で言うと「人」の動きだとしたら、ボールを強く押し出さなければいけない無回転のキックは「几」に近くなる。技術的にも肉体的にも、簡単に蹴れるキックではない。

 ただ、どれほど負担がかかろうとも、無回転FKが得点を生む金の卵である限り、それを封印するには少し理由が弱い。わたしは、ボールの違いも理由としては大きいはずだとみる。

 彼が無回転FKで世界を驚かせたW杯南アフリカ大会。大会の公式使用球は「ジャブラニ」だった。ズールー語で「祝い」という意味があるこのボール、FKのキッカーにとっては「しめす偏」だったかもしれないが、GKにとっては最悪の「くち偏」だった。つまり、「祝」ではなく「呪」だった。

 このボールが使用されるようになるまで、世界中のGKにとって、最高のプレーとはボールをキャッチすることだった。シュートもそう、ハイクロスもそう。空中に身体を躍らせ、全身が伸びた状態でボールを掴(つか)み、柔らかく着地する――。

 ところが、予測不可能な動きを見せるボールが導入されたことで、GKの常識は一変した。クリーンキャッチは、目指すべきプレーどころか、避けるべきプレーになった。捕るな。弾(はじ)け。それが常識になった。

 だから、今年の高校サッカーは嬉(うれ)しい驚きだった。
 岡山学芸館の平塚仁。久々に現れた、キャッチング能力で魅せてくれるGK。ある種時代に逆行するようなスタイルを容認した指導者も素晴らしい。

 すでにジャブラニは過去のボールとなり、今後は再び、GKの捕球能力が問われる時代が来る可能性もある。そうなれば、平塚のスタイルは、世界最先端だということになる。まだ2年生、今後の成長にも期待したい。(金子達仁=スポーツライター)

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