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【コラム】金子達仁

日本はFIFAランク10位から20位前後でチート級の強さ…そんな気にさせられた

[ 2023年6月21日 10:00 ]

サッカー国際親善試合   日本4-1ペルー ( 2023年6月20日    パナスタ )

<日本代表・ペルー代表>前半、追加点を決め喜ぶ三笘 (7番)(撮影・後藤 大輝)
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 W杯カタール大会の南米予選で、ペルーが4ゴールも食らったのは1試合しかない。

 相手は、ブラジルだった。

 リマで戦うペルーが、大阪で戦ったペルーより手強(てごわ)いことは間違いない。ただ、ホームでブラジルに4発、ブチ込まれた彼らは、敵地では0―2と善戦し、アルゼンチンとも0―1と接戦を演じている。つまり、アウェーだと格段に力が落ちる、というチームでもない。

 それだけに、この勝ち方は評価できる。

 FIFAランクではほとんど違いのない両チームの間には、しかし、それが信じられないほどの格差があった。おそらく、一番驚いたのはペルアーノ(ペルー人)たちだったのではないか。

 先週金曜日、彼らは韓国相手に1―0の勝利を収めた。体調はより整い、温存した主力も日本戦では先発させる。彼らの感覚からしたら、結果はともかく、内容で圧倒されることは想像しにくい試合だったはずである。

 だが、待ち受けていたのは、南米予選でもなかなかないような、手も足も出ない展開だった。ブラジルやアルゼンチン、ドイツやスペインが相手であればまだ納得もいくだろうが、日本となればそうもいかない。レイノソ監督のクビは、これで一気に冷たくなった。

 常識的に考えれば、この試合のMVPは巧みな位置取りで先制点を演出し、自らも1ゴールをあげた三笘ということになるだろう。異論はない。ただ、個人的にもっとも強い印象を受けたのは右SBの菅原だった。

 試合序盤、彼の目前にはペルーの背番号10がいた。韓国戦では出場していなかったため、情報は多くない。菅原からすれば、相当に神経を遣う立ち上がりだったはずである。

 しかも、かつてクビヤスやウリベといった選手がつけたエースナンバーを背負うこの選手は、決して運動量は多くないものの、頻繁に菅原の目前から姿をくらました。そして、開いたスペースには背後からロペスが侵入を狙っていた。

 だが、相当なサッカーIQの高さが求められる難局を、菅原はほぼ完璧にクリアした。責任ゾーンからの破壊工作は一度も許さなかったばかりか、呆(あき)れるほどのスタミナとスピードで上がり下がりを繰り返した。伊東からの落としを受けてタテに持ち出し、三笘へのアシストを決める鎌田にボールをつないだ場面は、世界のどこに出しても恥ずかしくない、実に美しい展開だった。わたしだったら、もう右サイドバックは彼で固定する。

 さて、今回の2連戦を通じて感じたのは、3月の2試合に比べると観戦のストレスというか、イライラが激減していたということ。ボールを持つ。行かない。下げる。回す。スペインあたりであればLGBT問題に関心の高い方たちが眉を顰(ひそ)めそうな罵声が飛び交うところ、日本の選手たちは漫然と退屈なボール回しを繰り返していた。

 だが、相手が10人となり、ほぼ蹂躙(じゅうりん)するだけだったエルサルバドル戦だけでなく、このペルー戦に関しても、無意味なパス交換は劇的なまでに減少していた。多くのパスには確かな殺意が隠されており、それがまた、ペルーの出足を鈍らせていた。

 ひょっとすると――。

 まだ確証はない。ただ、FIFAランク10位から20位前後の国々の中で、日本はチート級の強さを身につけつつあるのかもしれない。そんな気にさせられる試合だった。自信の度合いは60%――この思い込みが正しいか間違っているかは、9月のドイツ戦で明らかになる。(金子達仁氏=スポーツライター)

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