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【コラム】金子達仁

バスケW杯の熱狂「スポーツ」より「日本」を楽しんでいませんか?

[ 2023年9月7日 21:00 ]

「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」日本戦の視聴人数(到達人数)の推移(C)ビデオリサーチ
Photo By 提供写真

 米国は日本よりも人口が多い。国土も広い。いまやGDPでもかなりの差がある。それはわかっている。

 でも、得心はできない。

 なぜ米国には、あんなにも素晴らしいスポーツ施設が数多くあるのか。米国内で完結し、試合数も多くないアメフトのチームが、なぜあんなにも素晴らしいスタジアムを有しているのか。最近ではサッカーにしても、「うわ、行ってみたいな」と思わせるスタジアムが続々と誕生している。

 米国のスポーツに詳しい方にお会いするたび、理由を尋ねてきた。答えは千差万別。ただ、「なるほど」と思わされた答えもあった。

 「大富豪が私財で造る場合もありますけど、税金が投入される場合もあるわけです。そこで、スポーツのためならいいじゃないか、と考える人の割合が日本と違うのではないかと」

 この答えが正しいかどうかはわからない。ただ、日本が米国よりも「スポーツのためならいいじゃないか」と考える人間が多いとは、とても思えなかった。

 バスケのW杯。盛り上がった。というか、まだ盛り上がっている。河村、凄い。富永、神懸かってた……のだが、そこでふと我に返る。

 W杯、まだ続いてるんですけど。

 思い出すのは、94年のサッカーW杯米国大会である。サッカー不毛の地での大会ということもあり、盛り上がるかが懸念されたが、始まってみればどの会場も超満員の大盛況。何より驚いたのは、米国が敗退してからも、熱狂がまったく冷めなかったことだった。 

 場内時計が90分に近づくと観客がカウントダウンを始めるなど、サッカーの観客としては斬新な反応も見せてくれた米国人だったが、彼らは間違いなく、サッカーという馴染(なじ)みの薄いスポーツを楽しんでいた。

 これは良い悪い、あるいは優劣の問題ではない。ただ、米国に比べた場合、日本人が楽しんでいるのは「スポーツ」というよりは「日本」な気がする。日本の試合に興奮する。日本の勝利に熱狂する。つまり、日本が勝てなければ、盛り上がりは失われる。

 ちなみに昨年、W杯カタール大会決勝の米国における視聴者数は、約2600万人だったという。これは、アメフトのスーパーボウル(約1億1300万人)には遠く及ばないものの、NBAファイナルの平均視聴者数のほぼ倍の数字である。必ずしもメジャーではないスポーツの、それも自国が絡まないカードが、国内の伝統的な一戦に負けない視聴者数を集めたのだ。

 翻って日本はどうか。

 そもそもサッカーとバスケでは、W杯の重みがまるで違う、というのはある。サッカーは世界一決定戦。バスケは五輪予選も兼ねた国際大会。自国の“予選”が終われば興味を失う人がいるのも無理はない。

 ただ、それにしても、未(いま)だアカツキ・ジャパンの特集を組む一方で、W杯そのものにはまったく触れない報道には、正直、言葉を失う。昨日、大会はベスト4が出揃(そろ)ったが、その顔ぶれを知る日本人はどれだけいるだろうか。

 勝つ日本代表によって盛り上がった人気は、勝てなくなれば儚(はかな)く消える。なでしこを見ても、それはよくわかる。長続きさせるためには、豊かな環境をつくり上げるには、スポーツを、競技を愛してくれる人を増やしていくしかない。そして、いまの報道が、その方向に向かう一助になるとは、まったく思えない。もちろん、報じる側には、「いや、ニーズがないんで」という言い分があるのだろうが。(金子達仁氏=スポーツライター)

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