【コラム】金子達仁

マン・オブ・ザ・マッチは文句なしに権田

[ 2019年11月15日 13:30 ]

W杯カタール大会アジア2次予選   キルギス 0-2 日本 ( 2019年11月14日    キルギス・ビシケク )

W杯アジア2次予選、キルギス戦の前半、セーブするGK権田(中央)
Photo By 共同

 きょうばかりは日本の選手たちに同情する。彼らは“ダイレクトパス禁止令”を受けてこの試合を戦っていた。自分たちの大きな武器をあらかじめ封じられての90分だった。あのグラウンド状態では、世界のどんなスーパーチームであっても方針の変更を余儀なくされる。内容的には見るべきところの少ない試合だったが、批判する気にはまったくなれない。

 ただ、もう少しやりようがあったのでは、と思わないこともない。グラウンドはでこぼこ。しかも、キルギスはかなり強い圧力を柴崎、遠藤のところにかけてきていた。本来であれば一度中盤に預けてそこからの展開を狙いたいところなのだが、ちょっとしたイレギュラーに見舞われるのも怖い。必然的に多くなったのは、最終ラインからのロングボールだった。

 この日のCB2人、吉田と植田は対人プレーでは文句なしの強さを発揮した半面、フィードの精度は相当に低かった。通常、CBのパス成功率は95%を超えていなければ話にならないとわたしは思っているが、この日の2人の成功率は確実に50%を切っていた。グラウンド状態によって安全なところにつなぐという選択肢が封じられていた以上、仕方がないことではあるのだが、彼らが狙った前線への一発は、ほとんどの場合相手へのプレゼントになってしまった。そこが、最終ラインに正確なキックを蹴れる人間をおいていたキルギスとの違いだった。

 では、日本はどうするべきだったのか。

 中盤には圧力がかかっている。吉田、植田のフィードにはあまり期待ができない。1試合を戦ううちに彼らがバルサのピケになれるはずもない。そんな中、解決案を提示したのは柴崎だった。後半に入ると、彼は時折最終ラインにまで自分のポジションを下げたのだ。

 こうなると、キルギスは苦しい。柴崎についていけば中盤にスペースが空く。かといって放置しておけば正確なロングパスを見舞われる可能性がある。

 ところが、CBの位置まで下がってきた柴崎を、他の日本選手は依然としてボランチの柴崎として扱ってしまった。結果的に彼からロングパスが放たれることはほとんどなく、キルギスの守備陣が混乱に陥ることもなかった。流れの中からゴールを奪うことができなかったのも、当然といえば当然である。

 ただ、ひょっとしたら負けていた可能性もあったことを考えれば、今回の2―0には満足すべきなのかもしれない。前後半に1回ずつあった決定機のどちらかをGK権田が防げずにいたら、試合の流れは一気にホームチームに傾いていたところだった。この試合のマン・オブ・ザ・マッチをあげるとしたら、文句なしに権田である。

 ともあれ、アウェー3試合を含む今年の2次予選4試合を、無失点で乗り切ったことは高く評価したい。2次予選を勝つのはそれほど困難なことではないが、360分間、一度も致命的なミスを犯さずに乗り切ったというのは簡単なことではない。さらなる高みを目指そうという志がうかがえる記録である。(金子達仁氏=スポーツライター)

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