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【コラム】金子達仁

裏切られた期待 局面打開できる中島を抜擢せず 自信があると信じたい

[ 2018年6月4日 19:30 ]

日本代表に選ばれなかった中島翔哉
Photo By スポニチ

 ハリルホジッチの解任と西野朗の監督就任が発表された直後に「5月31日のメンバー発表は史上もっとも驚きに満ちたものになるのでは」と書いた記憶がある。監督が代わった以上、きっと何人かのシンデレラボーイが生まれる。そう思っていたからだ。

 だが、サプライズは皆無だった。史上もっとも驚きのないメンバー発表だった、といってもいい。ガーナ戦の完敗が西野監督の気持ちを動かすのでは、との淡い期待も、あっさりと裏切られた。

 前日の敗戦でファンの空気が一気に冷えつつあることは、西野監督も痛感していることだろう。ここで一度は外した中島あたりを抜擢(ばってき)すれば逆風を打ち消すことも可能だった。それがわからない西野監督だとは思えないし、願わくば、中島の突破力がなくても大丈夫だと考えた強い自信があるのだと信じたい。わたしならば、中島やハンブルクの伊藤のような個人で局面を打開できる選手は、絶対にメンバーに入れておくが。

 とはいえ、メンバーの選考は代表監督の専権事項である。自分の考えと違うからといって、西野監督を批判するつもりは実はない。驚きがまったくなかったこと。東京五輪につながる気配が感じられないメンバー構成になっていること。意見の相違をあげていけばキリがないが、それもまた、サッカーというスポーツの楽しみ方のひとつである。

 ただ、ひとつ猛烈に危惧していることがある。

 先日のガーナ戦で、西野監督は3バックを試した。チームとしての引き出しが増えるのは、もちろん悪いことではない。

 だが、本番までは3週間を切っている。この時期の監督交代は選手にとっても初めてのこと。先行きへの不安もあるだろう。彼らが欲しているのは何か新たな引き出しか?わたしは違うと思う。監督交代は間違ってなかった。これでやっていけるという手応えであり、つまりは結果である。

 わたしには、ガーナ戦での西野采配が、W杯を4年後に控えた監督のそれのように思えてしまった。誰が大黒柱なのか、エースなのかを明言しないのは、そうした存在が自然に育ってくるのを期待しているのかもしれないが、だとしたら、これまた著しく緊急性を欠いている。

 急ごしらえのチームで結果を出すのであれば、今まで以上のもの、本来の実力以上のものを発揮してくれる選手が必要になってくる。西野監督には時間がない。ならば、座して待っていてはいけない。意図的に指名し、あるいは刺激し、爆発的な覚醒を促すしかない。わたしならば、武藤か、柴崎にエースの座を託す。彼らと心中する覚悟を固め、一方で主役の座を剥奪された本田や香川の発奮にも期待する。

 引き受けた以上、時間がないことは言い訳にならない。西野監督の頭の中で、時間がないなりのプランが定まっていることを、もはや祈るばかりである。(金子達仁氏=スポーツライター)

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