【コラム】金子達仁

才能は成功を約束するものではない

[ 2017年5月19日 06:00 ]

U−20日本代表FW久保建英(左)
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 あれは7年ほど前だったか、サッカー解説者になりたてだった頃の玉乃淳さんに聞いたことがある。

 柿谷と香川、どちらが天才か。

 ヴェルディの下部組織時代に天才の名をほしいままにし、中学卒業後はスペインに渡った玉乃さんは、現役時代の終盤をJ2で過ごしたため、J1から降格してきたセレッソとも対戦していた。わたしとしては、ユース時代にフェルナンド・トーレスやイニエスタと同じピッチでプレーした経験のある玉乃さんに、ぜひとも聞いてみたかったのだ。

 「断然、香川君ですね」

 “柿谷派”だったわたしにとっては意外な答えだったが、玉乃さんは自信満々だった。7年後のいま、柿谷と香川の置かれている環境を見れば、どちらの眼力が確かだったかは明らかで、やっぱり、実際に戦った人の感覚は違うのだな、と改めて痛感させられる。

 J3のFC琉球に藤沢典隆という選手がいる。サンフレッチェ・ユース出身のテクニシャンで、ケガさえなければ間違いなくJ1でプレーしていたであろう選手である。広島時代、後に日本代表となる槙野や柏木と寝食をともにしてきた男が、先日、FC東京U―23と対戦した。となれば、当然聞きたい質問が出てくる。

 「やっぱりモノが違うなとは思いましたよ。15歳であの落ち着きは凄い」

 現役日本代表の若い頃を知り、かつ実際に対峙(たいじ)した彼が言うのだから、こちらも「そうか」と頷(うなず)くしかない。むろん、久保建英についての評価である。わたしの中では、久保の才能についてまたひとつ太鼓判が押された気分だった。

 ただ、忘れてはいけない。才能は、選手が成功する上で極めて重要な要素ではあるものの、成功を約束するものではない、ということを。そして、世界中には、10代の頃は眩(まばゆ)いばかりの輝きを放ちながら、大成することなく消えていった選手が数多(あまた)いることを。

 最近になってしみじみ思う。五輪も含め、年齢別の国際大会における結果ぐらい、あてにならないものはない。W杯優勝からすでに7大会も遠ざかっているアルゼンチンは、20歳以下W杯では95年から07年の12年間7大会のうち、実に5回を制するという圧倒的な強さを誇っていた。五輪王者になったナイジェリアやガーナも、依然W杯では無冠のままである。

 まもなく、韓国で20歳以下のW杯が始まる。久保の存在もあり、今回は大会への注目度がいつも以上に高い印象がある。わたし自身、久保がどれだけできるのか、三好が、堂安が、小川がどれだけ暴れてくれるのか、大いに興味がある。ただ、この大会での内容や結果が将来を約束するものではないことは、肝に銘じておきたいと思っている。

 年齢別の国際大会で勝つことは、むろん、無意味ではない。ないが、レベルの高い国内リーグを保持することに比べれば、その効力は、せいぜいおまじない程度、である。(金子達仁氏=スポーツライター)

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