「舞いあがれ!」が描くリーダー像 福原遥の芝居の説得力

[ 2023年3月2日 08:30 ]

連続テレビ小説「舞いあがれ!」で舞(福原遥)が新事業に関して話す場面(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】2日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第105回で、ヒロインの舞(福原遥)が新聞記者だった御園(山口紗弥加)に「舞ちゃんは社長に向いていると思う」と指摘される場面があった。

 舞のリーダーとしての資質は、2月28日放送の第103回に表れていた。ひし形金網を作る町工場の小堺(三谷昌登)が経営不振による廃業を考えていることを打ち明けると、新商品を作ることを提案。ひし形金網でハンモックを作るアイデアを伝え、小堺が「支柱が無理」と否定的な見解を示すと「支柱を作るところを私が探します」と宣言した。

 さらに、町工場の廃業危機について「小堺さんだけの問題じゃない」と主張。その言葉に心を動かした小堺が「おまえ、逃げるなよ」と確認すると、目を見つめて「はい」と明答した。こうした一連の発言には、リーダーに必要と思われる発想力、説得力、行動力、先見性、情熱、人格などの要素が含まれているように感じられた。

 舞がなぜ、このようなキャラクターになったのか。制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは「物語の終盤で、舞が新しい会社を立ち上げることは当初から考えていた。脚本を作る上で、いろいろ取材する中で、現代の新しいリーダー像と、舞が子供の時から積み上げてきたキャラクターがマッチしていると感じた」と明かす。

 制作側は20代、30代で起業した人たちを取材。従来のリーダー像とは違う印象の人がいることを実感したという。

 熊野氏は「何かを発想し、旗を立てるところは同じだが、そこから自分でぐいぐいと行くのではなく、必要な能力を持った人に声を掛けて進んでいく。自分で全てを決めるワンマンではなく、中心にはいるものの、周りのそれぞれの能力をきちんと見極めて任せ、緩やかに統合していく。そういう印象を強く受けた。周りに対する押しが弱そうだが、意外に、そういうリーダーに人がついていくと感じた」と説明する。

 舞の幼少期からの人物設定は、いろんな人とつながって手を携えて空高く上がっていくイメージ。周りの人たちの気持ちを推し量りつつ、自分が前に進もうとする時、まず周りを見て、その人が一緒に来てくれているかどうかを確認しながら動く。

 熊野氏は「そういうキャラクターのコンセプトが最初からあり、それに合う役者さんとして福原さんにお願いした。福原さんは撮影現場で、チームをぐいぐいと引っ張る感じではなく、穏やかで柔らかく、みんなに目配り、気配りをしながら、みんなが全力を出して頑張れるような雰囲気をつくってくれた。そこが舞のキャラクター、現代の新しいリーダー像に重なり、お芝居に説得力を持たせてくれている」と話す。

 福原が「理想の上司」「理想の社長」などのランキングに顔を出す日が来るかもしれない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2023年3月2日のニュース