【芸人 イチオシ】ハリウッドザコシショウ 裸一貫でのし上がる芸人道 次なる目標は…

[ 2022年9月17日 09:00 ]

ポーズをとるハリウッドザコシショウ(撮影・郡司 修)
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 ぽっこりと出たお腹にテンガロンハット。ハリウッドザコシショウ(48)の奇声混じりの「誇張モノマネ」は一度見たら忘れられない。エキセントリックな芸風がひとり歩きしがちだが、まもなく芸歴30年。実は長いキャリアに裏打ちされた爆笑芸なのだ。昨今、お笑い界でも存在感を増すソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)所属芸人の筆頭格。裸一貫から這い上がった、その背中には風格すら漂う。

 「僕、SMAの芸人はイチオシできないんですよね。僕が夢中になっているものといったら、ゲーム、編集とかですかね…」

 決してゲーマーではない。2009年から毎日欠かさず投稿しているYouTube。そのネタに使われることが多いのがゲームであり、編集作業は自ら行う。登録者数は22万人。これまでの投稿数は4500本以上にのぼる。

 テレビの収録を終えて帰宅し、子育てや家事を済ませて、自由時間ができるのは午後10時ごろからだ。「そこからYouTubeを撮影して編集してアップする。寝るのは午前5時くらい。とにかく時間がないんですよ」

 ザコシショウにとってYouTubeは「やりたいことのはけ口」。自身の意図していない所で編集が入ることもあるテレビに対し、ただ純粋に自分が面白いと思ったことを表現できる貴重な場だ。

 今でこそ芸人として確固たる地位を築いているが、これまで順風満帆ではなかった。93年にコンビ「G★MENS」としてデビューし、後にピン芸人に。事務所も吉本興業、ワタナベエンターテインメント、フリーと転々し、05年から現在のSMAに所属した。「どこか傷を負った芸人たちが多く、やりやすかった」と述懐する。

 TBS「あらびき団」などで露出はあったものの、すぐにブレークとはいかなかった。そんな中、目の前の景色がパッと明るくなったのは16年の「R―1ぐらんぷり」優勝だった。
 
 「事務所が抱える大きな番組もないし、ゴリ推しがある訳でもない。SMAには賞レースしかない。我々にはそれしかないんです。バイきんぐ、錦鯉、みんなそうやってチャンスを掴んだ」

 圧倒的な勢いで、場の空気を一変させる芸風。その裏には緻密な計算がある。R―1で審査員を務めた際にも、講評での的確な指摘が話題に。同じ事務所の錦鯉ら、ザコシショウのアドバイスによりブレークした芸人も少なくない。

 愛情を込めて後輩たちには警笛を鳴らす。「例えばみんなで飲みに行ったとする。後輩たちは家に帰って寝るんです。でも僕はYouTubeを撮って編集する。そこに差がある。SMA芸人を“イチオシ”できないというのはそういう部分なんです。本来は1秒も無駄にできないんですよ」

 次なる目標に向けて日々研鑚を続ける。「いつか冠番組を持ちたいんですよね。『1人ごっつ』みたいな。あんな番組に憧れます」。“師匠”と呼ばれる大仏と、ダウンタウン松本人志(59)のかけ合いのみで進行する1990年代に放送された伝説的なバラエティー番組。大喜利やコントなど、松本が身ひとつで様々な笑いに挑戦したことで話題を呼んだ。
 
 「例えば30分。自分の面白いと思ったことをやり続ける。今はそんな番組は少なくなってしまったけれど、自分の冠でお笑い三昧になりたい」

 決して後輩たちを言葉で引っ張り上げていくタイプではないが、関係者は「ザコシさんの姿を見て刺激を受けている若手は少なくないです」と明かす。

 お笑いが好きで堪らないザコシショウにとっての“イチオシ”は、お笑いに人生のすべてをかけられるかどうか。きっと、その背中を見た後輩たちにも“師匠”の思いは届くはずだ。
 
 ○…YouTubeと同じく、イチから100まで自身の笑いを届けられる場が単独ライブだ。今月19日、東京・座・高円寺2でライブツアーの追加公演が決定した。「もともとやるつもりもあって、単に劇場を抑えていなかっただけなんです」と笑い、ライブは全て自身でプロデュース。「演出はもちろんチラシも全部自分で作ります。公演ごとにやるネタも変えます」。笑いへの貪欲なこだわりが、ここでもうかがえる。会場チケットはすでに完売しているが、配信チケットは引き続き発売中。以下URLから購入することができる。https://stagecrowd.live/s/sc/group/detail/10246?ima=2216

 ◇ハリウッドザコシショウ 1974年(昭49)2月13日生まれ、静岡県出身の48歳。92年に高校の同級生と大阪NSCに11期生として入学。02年にピン芸人に。16年に「R―1ぐらんぷり」で優勝。プライベートでは11年に一般女性と結婚。2児の父

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