名人戦第3局 渡辺名人が勝って2勝1敗と先行 第1局に続く相矢倉を受けの強手で制す 

[ 2021年5月5日 18:18 ]

斎藤八段(左)を下し2勝目を挙げた渡辺名人(日本将棋連盟提供)
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 渡辺明名人(37)=王将、棋王の3冠=に斎藤慎太郎八段(28)が挑む第79期名人戦7番勝負第3局は5日、名古屋市の万松寺で2日目が指し継がれ、後手渡辺が94手で制して対戦成績を2勝1敗とリードした。昨期初めて奪取した名人位の初防衛へあと2勝とした。

 斎藤が急戦矢倉を採用し、受けに回った1日目。「攻められるのは仕方ないというスタンスだった」と渡辺。天王山周辺の押し引きから昼食休憩前、お互いの右桂が5段目に跳ね合って敵陣を直射した。

 急戦矢倉特有の中盤から終盤が短い、殺気をはらんだ展開。渡辺が「握り寿司御膳(さび抜き)」(寿し半)、斎藤が「特上うなぎ丼」(澤正)を注文した休憩明け、自陣へ成り込んできた斎藤の桂を2枚の金、さらに左桂の3択から何で取るかが斎藤の想定を超えた。

 渡辺は玉に一番近い金を前進させて取った。玉の周囲から守り駒が消えるだけに指し難い一手。「読めなかった。精度が甘かったのかなと思う」。斎藤は局後、そう脱帽し、渡辺も「本譜みたいな一本道なら勝っているのかな」と手応えを感じたという。斎藤の飛車にさばきを許さず、自身の飛車は横利きも通った。

 そして、斎藤が飛車角両取りを決めた銀打ちが号砲。これに強く、角切りから王手桂取りに桂を打ち込んで一気に終盤戦へ。斎藤の飛車角、成銀に迫られた渡辺王だが、3時間近くある残り時間も心強い。自玉の詰めろに臆することなく詰み筋へ踏み込んでいった。

 テニスと同様、先手番をキープし続けて、後手番で1勝すればシリーズを制することができる。5番勝負でも7番勝負でも、基本姿勢は同じ渡辺にとって後手番での第3局勝利は大きな価値がある。「次、また間があくので近くになったら作戦を練って臨みたい」。

 第4局は19、20日に長野県高山村の「緑霞山宿藤井荘」で指される。

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2021年5月5日のニュース