中村吉右衛門 一時心肺停止か、直前まで歌舞伎座で公演…食事中に倒れ緊急搬送

[ 2021年3月30日 05:30 ]

緊急搬送された中村吉右衛門
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 歌舞伎俳優で人間国宝の中村吉右衛門(76)が28日夜に緊急搬送されていたことが29日、分かった。都内のホテルのレストランで関係者と食事中に倒れた。一時心肺停止だったとの情報もある。現在は都内の病院で治療中。倒れる直前まで東京・歌舞伎座での公演に出演しており、あまりに突然の事態に歌舞伎界に衝撃が走った。

 複数の関係者によると、吉右衛門は食事中に体調不良を訴えて倒れた。居合わせた人により心臓に電気ショックを行うAED(自動体外式除細動器)による処置が行われ、そのまま近くの病院に搬送された。予断を許さない状況が続いているという。

 所属の松竹は29日、「昨日都内のレストランで体調を崩し、都内の病院に搬送され、現在は療養中」と、病状には触れずコメント。一時的に心肺停止状態になったとの情報もあり、関係者の一人は「28日夜の時点で、歌舞伎関係者らに“かなり難しい状況”と連絡があったと聞いています」と話した。

 吉右衛門は28日、歌舞伎座での「三月大歌舞伎」第3部に出演していた。舞台では変わった様子は見受けられなかったが、別の歌舞伎関係者によると「何日か前から体調が悪かったように見えました」という。

 吉右衛門は2013年に味覚障害を発症し一時食事が取れず体重が10キロ減った。ここ数年は体調不良による休演も相次いでいた。1月も歌舞伎座の公演を8日間休演しているが「この時は足腰が少し弱っており、そのことが影響したと聞いていた」(同関係者)と、病気ではなかったと説明した。

 親しい別の関係者は「昨年12月に配信されたデジタルマガジンのコラムで、ある手術を受けたと明かしている。体に思った以上の影響があり大声を出すと息が上がったり、立ち上がるにも苦労すると記していた」という。これらの異変が今回の倒れた原因と関連しているかは不明だが、昨年11月には上方歌舞伎の第一人者で同じ人間国宝の坂田藤十郎さんが亡くなっており、体調面を心配する声は各方面から上がっていた。

 当たり役となったフジテレビの時代劇「鬼平犯科帳」シリーズで世間に愛され、歌舞伎界では確かな技術もあり、生きる手本と言える存在。昨年8月には人間国宝で初となるオンライン配信を行うなど新しいことも貪欲に取り入れる姿勢も併せ持ち、人望も厚い。

 かねて、80歳で人気演目「勧進帳」の弁慶を演じること、その舞台で孫の尾上丑之助(7)と共演することが目標と公言していた。その願いをかなえるためにも無事に回復に向かうことが願われる。

 《松本幸四郎が代役》吉右衛門は第3部「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」で石川五右衛門役を演じる予定だったが、松本幸四郎(48)が代役を務めた。幸四郎が予定していた真柴久吉役は中村鴈治郎(62)が代わりに演じた。観劇した40代男性は「代役ということを感じさせない力強い舞台でした」と語った。幸四郎は出番を終えた約1時間15分後に歌舞伎座を後にし、報道陣からの呼び掛けに対応することはなかった。

 ◆中村 吉右衛門(なかむら・きちえもん、本名波野辰次郎=なみの・たつじろう)1944年(昭19)5月22日生まれ、東京都出身の76歳。八代目松本幸四郎(のち初代松本白鸚)の次男として生まれ、母方の祖父・初代中村吉右衛門の養子になる。48年に4歳で初舞台。66年に二代目中村吉右衛門を襲名。「松貫四」の名前で歌舞伎の脚本を手掛けることもある。趣味は日本画と句作。1メートル78。

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