「麒麟がくる」脚本・池端俊策氏「本能寺の変」描写プラン「見えた」従来の明智光秀像は「全く白紙に」

[ 2020年1月11日 08:00 ]

「麒麟がくる」脚本・池端俊策氏インタビュー

大河ドラマ「麒麟がくる」の脚本を手掛ける池端俊策氏(C)NHK
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 俳優の長谷川博己(42)が主演を務めるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜後8・00)は19日にスタート。名手・池端俊策氏(74)がオリジナル脚本を手掛ける。大河初の主役・明智光秀ら戦国時代の英傑たちが“英傑以前”だった時代から描くが、最大の注目は光秀が織田信長を討った「本能寺の変」(1582年)。執筆も中盤に差し掛かった池端氏は「克明にじゃないですが、全体のアウトラインの最後の帰結としての本能寺はこうあるべきだなというのは、僕の中にあります。最初はなかったんですが、ようやく見えてきました」と“戦国最大のミステリー”をどう描くかのプランが出来上がりつつあることを明かした。主人公についても、従来の光秀像を「全く白紙にしました」と新しいキャラクター造形に挑んでいる。

 大河ドラマ59作目。第29作「太平記」(1991年)を手掛けた池端氏のオリジナル脚本で、智将・明智光秀を大河初の主役に据え、その謎めいた半生にスポットを照らす。物語は1540年代、まだ多くの英傑たちが“英傑以前”だった時代から始まり、それぞれの誕生を丹念に描く。

 若き明智光秀(長谷川)織田信長(染谷将太)斎藤道三(本木雅弘)今川義元(片岡愛之助)、そして豊臣秀吉(佐々木蔵之介)徳川家康(風間俊介)が所狭しと駆け巡る――。戦国初期の群雄割拠の戦乱の中、各地の英傑たちが天下を狙い、命を懸け、愛を懸けて戦う戦国時代のビギニングにして「一大叙事詩」となる。

 昨年11月上旬のインタビュー。2018年10月から執筆を開始して1年。「桶狭間の戦い(20話台)まで書き終わったところです。(全体の)真ん中ぐらいには来たと思います。執筆は楽しんでいます。非常に著名な戦国武将が登場しますから、その人たちと光秀がどう関わっていくのか。戦国時代を探訪して歩いているみたいな感じ。史実はハッキリしていますが、その点をつなぐ線というのは、こちらが自由に描けるわけで。自分なりに解釈して、従来のイメージを変えて書くのは楽しいです。戦国時代は本当にいろいろな人が登場して、人物図鑑みたいなところがあります。それを1つ1つ塗りつぶしていくような楽しさがあります」と順調に進んでいる。

 気が早いとはいえ、最大のクライマックス「本能寺の変」をどのように描くのか、構想を尋ねると「ここにきて(構想やプランが)出来上がってきました。克明にじゃないですが、大体こういうことだなという、つまり全体のアウトラインの最後の帰結としての本能寺はこうあるべきだなというのは、僕の中にあります。それが何かは今は言えませんが(笑)」と明かした。

 「本能寺はどうあるべきかというのは、最初はなかったんです。堺正章さん(望月東庵役)に『光秀は結局、どうして本能寺の変を起こしたの?』と聞かれて『いや、よく分からないんです』と。『よく分からないのに書き始めているんですね』なんて笑っていらしたんですが。最初は『どうしようか、どうしようか』と思いながら、手探り。それで、ようやく本能寺はこうあるべきだなというのが見えてきました」

 制作統括の落合将チーフプロデューサーは「基本的に、このドラマは明智光秀と織田信長、2人の関係性を色濃く描く作品。となれば、その片方の信長が光秀に討たれた本能寺の変は、ほとんど最終回に近いところになると思います」と補足した。

 光秀は41歳まで史料がなく、何をしていたか、分かっていない。

 池端氏は「いろいろな研究もあり、それも踏まえていますが、ドラマは研究結果の発表の場じゃないので。光秀が生まれて、41歳まで何をしていたのかを考えるところから出発しました。41歳までの光秀は誰も見たことがないので、ある意味、自由に考えられますが、ただし、周囲の状況は割合、ハッキリしていることもある。斎藤道三のところにいたとか、織田信長が少し遅れて生まれているとか。だから、光秀を描くということは、同時代の彼らとの関係を描くことになります。皆さんが知っている従来の光秀は、信長側から見た光秀、あるいは江戸時代に書かれた徳川家康寄りから見た光秀で、逆賊だったという発想からスタートしている。それは違うんじゃないかと。もっと客観的な光秀がいたはずじゃないかと。光秀がどういう顔をしていたのかは、もう想像するしかないんですが、僕は今までの明智光秀像を全く白紙にしました。だから、僭越ながら、自分がどう感じるかを書けばいいんだなと。『道三を見て、どう思ったのか』とか『信長と会った時、こういう衝撃を受けた』とか。史料がハッキリしている人物たちとの出会いを描いて、その時々の受け止め方、リアクションから光秀像を導き出そうと思っています」と意気込んだ。

 タイトルにある「麒麟」とは中国神話の伝説上の霊獣で、王が仁のある政治を行う時に必ず現れるという聖なる獣。光秀が主人公に決まり「麒麟の概念は戦国時代にあったんですが、『麒麟がおもしろいんだ』と、この作品に持ち込んだのは池端さん。僕らも度肝を抜かれました」(落合CP)。NHK「聖徳太子」「夏目漱石の妻」、TBS「イエスの方舟」「協奏曲」など数々の名作を生み出してきた池端氏の筆に期待は高まる。

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