根本宗子 モーグル断念のケガ幸い「結果的によかった」目標は女クドカン

[ 2017年2月16日 11:01 ]

根本宗子インタビュー(下)

新作「皆、シンデレラがやりたい。」が16日に初日を迎える劇作家・演出家の根本宗子
Photo By 提供写真

 新進気鋭の脚本家・演出家で女優の根本宗子(27)の新作舞台「皆、シンデレラがやりたい。」が16日、東京・下北沢の本多劇場で開幕する。スキーのモーグル選手が夢だったが、中学1年の時に重傷を負い、断念。19歳で劇団を旗揚げ。次世代の演劇人として今、最も注目を集める存在になった。思春期のケガも今となっては「結果的によかったんじゃないですかね」と怪我の功名。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」をはじめ、数々の作品で知られる劇作家・宮藤官九郎(46)の女版を目指し、新たな夢を追い掛ける。

 中学1年の時、スキー中に転倒し、股関節を骨折。「車にひかれるぐらいのことがないと折れない位置」だったといい、中1〜高3と6年間、骨が完全に修復されるまで車イス生活を送った。

 母親の趣味が演劇鑑賞だったため、小学生の頃から「生活の中に、日常的に芝居を見に行くということはありました」。もうモーグルは無理という重傷。「たぶん芝居だったら座って見ていられるから」と母親に積極的に劇場に連れ出された。

 観劇にハマるきっかけは2003年2月、東京・渋谷のシアターコクーンで上演された大人計画「ニンゲン御破産」。十八代目勘三郎を襲名する前の中村勘九郎さんが主演した。「大人計画」は松尾スズキ(54)が主宰し、阿部サダヲ(46)や宮藤が所属する人気劇団。

 根本は「それまで全く見たことがない種類の芝居。とにかく衝撃的。とにかく何が何だか分からず、話も分からなかったです。それまで起承転結が分かりやすいものしか見たことがなかったので、理解できないものを初めて見て、それが何だったのか知りたくて、どんどん見るようになりました」と振り返った。

 高校時代には年間100本強を鑑賞。2009年、19歳の時、劇団『月刊「根本宗子」』を旗揚げ。15年上演の「夏果て幸せの果て」が“演劇界の芥川賞”と呼ばれる第60回岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選出。昨年9〜10月には女優・橋本愛(21)の初舞台作となった劇団第13回公演「夢と希望の先」(本多劇場)を作・演出し、好評。若手注目株の1人になった。

 ケガをしたことは、今となってみれば「結果的によかったんじゃないですかね」と回顧。「冬季オリンピックを見ていたら、モーグル楽しそうだな、出たいなと、ちょっと思いますけど」と笑った。「でも、モーグルの方が全然、楽です。モーグルはいい滑りをしたら点数がもらえて、ダメだったらもらえないというのがとても分かりやすかったので」と表現の世界の難しさを感じながらも「己と闘うことは、たぶんモーグルで鍛えられたんだと思います。本を書くのも、すごく孤独ですから」と現在に役立っている。もしケガをしなかったら?と聞くと「スキーのインストラクターになっていたと思います。(劇作家には)絶対なっていないと思います」とした。

 演劇の魅力は「客席の熱と演者の熱が合わさる」瞬間。「テレビだと1人で見たり、映画館もスタンディングになったりしないじゃないですか。こっちがポイントだと思ったところが客席にヒットした瞬間はおもしろいです。自分がお客さんとして見ていた時にも感じた熱のあるものをやろうとは思っています」

 今後については「劇団としては本多劇場(東京・下北沢、386席)1カ月公演が私の中のゴール。もっと大きな劇場だと、もう少しショー的じゃないですが、エンターテインメント要素を魅せる演出ができなきゃいけないと思います。同世代の人は演劇を見ることが多くないので、劇場に呼べたらいいですし、演劇はおもしろいんだということを知っていただくために、より多くの人に見ていただきたいです」。目標の人物は「宮藤(官九郎)さん」と名前を挙げ「女の人で宮藤さんみたいな感じになりたいです」と語った。

 今春にはKAT―TUNの上田竜也(33)が3年ぶりに主演を務める舞台「新世界ロマンオーケストラ」(4月30日〜5月21日、東京グローブ座)の作・演出を担当。今夏には女優として人気劇作家・赤堀雅秋(45)の新作舞台(7月22日〜8月13日、ザ・スズナリ)に出演し、新井浩文(38)荒川良々(43)らと共演する。さらに引く手あまたになるのは確実。演劇界の新星が大きく羽ばたく。

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2017年2月16日のニュース