「皆、シンデレラがやりたい。」気鋭の劇作家・根本宗子が新境地

[ 2017年2月16日 11:00 ]

根本宗子インタビュー(上)

新作「皆、シンデレラがやりたい。」が16日に初日を迎える劇作家・演出家の根本宗子
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 次世代の演劇人として今、最も注目を集める脚本家・演出家の1人で女優の根本宗子(27)の新作舞台「皆、シンデレラがやりたい。」が16日、東京・下北沢の本多劇場で開幕する。「劇団☆新感線」の看板女優・高田聖子(49)らをキャストに迎え、同世代と作る従来の劇団公演とは異なる脚本に挑戦。新境地を開拓し「客層、リアクションがすごく楽しみ」と意気込んでいる。

 2009年、19歳の時、劇団『月刊「根本宗子」』を旗揚げ。15年上演の「夏果て幸せの果て」が“演劇界の芥川賞”と呼ばれる第60回岸田國士戯曲賞の最終候補作品に選出。昨年9〜10月には女優・橋本愛(21)の初舞台作となった劇団第13回公演「夢と希望の先」(本多劇場)を作・演出し、好評を博した。

 新作のたびに動員を増やし、人気急上昇中。若手注目株として勢いに乗る中の今作は、男性アイドルの追っかけをしている40代女性を中心に描く悲喜劇。“おばさん3人組”を演じる高田、「大人計画」の猫背椿(44)「ナイロン100℃」の新谷真弓(41)に加え、元モーニング娘。の新垣里沙(28)小沢道成(31)と根本が出演する。

 アイドル「一ノ瀬陸」の追っかけをして知り合った3人組、榎本幸枝(高田)神保裕子(猫背)角川明海(新谷)。ある日、ツイッター上で一ノ瀬の恋人と思われる地下アイドル・三村まりあ(新垣)の存在を知る。1人のアイドルをめぐり、出会うはずのなかった4人の奇妙なバトルが始まる…。

 根本脚本の特徴の1つはセリフの多さ。「普段、同世代の人と作る芝居の時、終盤に登場人物が感情を吐露するセリフは、思っていることを全部、最後まで言う」が、今回は「これでも言っている方だと捉えられると思うんですが、いつもよりセリフは書かなかったです」。それは高田、猫背、新谷と、それぞれの劇団を背負う百戦錬磨の女優が「そこにいるだけで舞台を埋める力を持っていらっしゃるので。いつもの芝居はほぼ間がないんですが、今回は絶え間なくしゃべっている中にも間を入れることを考えました。役者さんのリアクションだけを見せる時間を作ったり。お客さんからすると、セリフの印象はそんなに変わらないかもしれないですが、本を書く中で意識的に変えたのはそこかもしれないです」と新境地を開拓した。

 同世代と作ってきた従来の芝居は「時空が歪むとか、気合で時間を戻すとか、台本上、無理やりなことがあっても、若い人がエーイッと頑張っている様で、熱量で盛り上げるみたいな、無理やり持っていっている部分があったんですが、敢えてそうしているんですが、今回はそういうことがありません。現実で起こり得る範囲でしか書いていないです。マネジャーさんにも『久々に最後までちゃんとしたのを書きましたね』と言われました」と笑った。

 “おばさん3人組”がアイドルにいくら投資したのか――も物語のカギの1つ。「人の一番えげつない瞬間が出るのは、お金が絡んだ時だと思うんです。遺産相続の話はよく映画やドラマになりますが、もう少し日常に落とし込んだエピソードの中で、お金による小競り合いみたいなものができたら、おもしろいと思いました」と着想。幼少の頃から、母親同士が会計時に割り勘で譲り合う姿も印象に残っていた。

 「喫茶店とかで、お母さん同士が『この間は払ってもらったから、ここはいい』とか言って、カバンに1000円札をギュッと入れるみたいな光景が、小さい時からすごくおもしろくて。人数が増えるほど、何人もがカバンに1000円を入れ合っているみたいな。女の人は妙に『次のお茶は私が出すから』とか、女性特有なんですかね。お金に関するおばちゃんの集まりのやり取りは、昔からナゾが多くて。その部分だけ切り取ったら、ただのコントになってしまうので、そこからお話を考えるというのは意識しました」

 「今回は客席の層がすごく楽しみなんです。普段、自分の劇団に付いているお客さんは、うちの劇団の芝居しか見たことない人が非常にたくさんいて」。今回は人気劇団所属の高田、猫背、新谷が出演することもあり、目の肥えた演劇ファンと「半々の客席になるのかなと。リアクションがすごく楽しみです」と手ぐすねを引いて待っている。

 上演時間は1時間45分(休憩なし)を予定。公演は26日まで。

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