オリ・中嶋監督「いい夜空」 素顔は情に厚い指揮官“こいつ打たれたら…”苦悩の中、勝ち取った日本一

[ 2022年10月31日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2022第7戦   オリックス5-4ヤクルト ( 2022年10月30日    神宮 )

<ヤ・オ>優勝し、胴上げされる (撮影・白鳥 佳樹)
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「SMBC日本シリーズ2022」の第7戦は30日、神宮球場で行われ、オリックスが5―4で勝利。96年以来、26年ぶり5度目の日本一に輝いた。昨年の雪辱を果たした中嶋聡監督(53)は神宮の夜空に5度舞い、喜びを爆発。初回に先頭の太田椋内野手(21)がシリーズ史上初の初球先頭打者弾で主導権を奪うと、5回にも4点を追加。先発の宮城大弥投手(21)は5回無失点の好投でシリーズ球団最年少勝利となった。

 9回2死無走者、ワゲスパックが最後の打者・塩見を空振り三振に仕留めると、ベンチの中嶋監督は両手で頭を抱えて喜びを爆発させた。ナインと何度も抱擁を交わしてマウンドに歩み寄り、5度、神宮の夜空に舞った。

 「非常にいい夜空でした。(ヤクルトは)本当に強いチームで、何点あっても絶対に追いついてくると思っていた。本当に怖いチーム。しんどかった」

 27年前に、恩師と味わった悔しさを晴らした。現役時代7季計20試合出場した日本シリーズで2度、頂点の景色を見た。「野村IDVS仰木マジック」と言われ、自身が初出場した95年は1勝4敗。故仰木彬さんが苦悩する姿も間近で見た。指揮官として臨んだ2度目の頂上決戦。因縁の相手に3戦未勝利から4連勝で96年以来26年ぶりの日本一を決めた。

 「調子のいい選手をどんどん使って全員で勝つ、それをシンプルにやっただけです」

 打順はシリーズ7戦で6通り。143試合で141通りだったレギュラーシーズン同様、恩師譲りの“猫の目打線”は不変だった。

 継投もさえた。「4戦目の宇田川で、この投手陣ならいけると思った」。節目は敗れれば王手をかけられた27日の第5戦。宇田川と山崎颯の剛腕2人をベンチから外した。26日の第4戦で宇田川は1回2/3を32球、山崎颯は2回で35球を投げていた。温存は「4勝」をつかむための最善策。「(2人以外)いないわけではないから。自信はあった」。代わって躍動した阿部は1回1/3を無失点。前回登板だった23日の第2戦の9回、代打・内山壮に同点被弾していた右腕を立ち直らせた。この日、6回から救援した宇田川の2回零封を引き出した。

 「継投が一番難しい」。昨季終了後のこと、指揮官が漏らしたのは本音だった。「“こいつ打たれたら明日から、どうするのかな”ってところまで考えた。何も考えず情もクソもなかったら、できるだろうけど。失敗すれば、その投手が悪いみたいになる。難しいよ、監督って。できることなら負いたくないよ」。それはユニークな性格を封印し、闘将に徹した中嶋聡の素顔。情に厚いから選手も応える好循環だった。

 今春キャンプ前に宮崎・小戸神社で必勝祈願した際、絵馬に「頂」の一字をしたためた。吉田正が高校時代から好んで使う言葉で、同じく「頂」と記していた。示し合わせた訳ではなかったが、強い決意の表れだった。

 大接戦を制してつかんだ記念球は若月から受け取った。感想を尋ねられると、「感動的なことを言えればいいんでしょうけど、ないです」と中嶋節。求め続けた頂へ、たどり着いた。 (湯澤 涼)

 ◇中嶋 聡(なかじま・さとし)1969年(昭44)3月27日生まれ、秋田県出身の53歳。鷹巣農林高から86年ドラフト3位で阪急入り。正捕手として95、96年のリーグ連覇に貢献。西武、横浜(現DeNA)、日本ハムを経て15年限りで引退。1軍通算1550試合で804安打、55本塁打、349打点。日本ハムのコーチなどを経て19年にオリックス2軍監督就任。20年8月21日から1軍で監督代行を務め、シーズン後に監督就任。1メートル82、84キロ。右投げ右打ち。

 【データ】オリックスが96年以来26年ぶり5度目の日本シリーズ優勝。25年のブランクは現行のものでは広島の38年(84年V)、阪神の37年(85年V)に続く3番目の長さだった。5度の優勝は巨人の22度を筆頭に西武13度、ソフトバンク11度、ヤクルト6度に続く5位。

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2022年10月31日のニュース